日本翻訳連盟(JTF)

3-4「MLVの屋台骨!! プロジェクトマネージャー達が語るローカライズ現場の舞台裏とトレンド(と本音)

パネリスト:

柴山 康太 Shibayama Kohta


Welocalize Japan 株式会社
LPM MANAGER, ASIA
(株)スリー・エー・システムズ(後の(株)テック・インデックス)に入社後、Welocalize Japan設立と共に転籍、日本法人の礎を築く。翻訳業界における経験と実績は10年以上。ローカライザー、品質管理、PMを経て、2012年より現職。プレイングマネージャーとして日々修行中。

田辺 朋子 Tanabe Tomoko


ヨンカーズ トランスレーション アンド エンジニアリング株式会社
シニア プロジェクト マネージャ
広報、ライターなど様々な職場を経て、1996年から米国の翻訳会社で、翻訳チェック、DTP、プロジェクトマネジメントを経験。帰国後、2000年よりMLVでプロジェクトマネジメントに従事。英語から日本語、多言語化プロジェクトのグローバルPMを担当。2006年にヨンカーズに入社。

内山 敬 Uchiyama Takashi


Moravia IT a.s.
プロジェクトマネージャー
歴史研究者志望の大学院生から転じ、SLVにPMアシスタントとして入社。後にPMとなり、MLV1社を経て2008年よりMoravia東京オフィスにて勤務。標準的なローカライズの他、特殊な要件を持つソフトウェア、ゲーム、E-learningのローカライズを中心にハンドリング。

モデレーター:

平野 幸治 Hirano Koji


株式会社メディア総合研究所
国際メディア事業部 企画・広報部長
大学卒業後、外資IT企業にて翻訳会社とのドキュメント開発のコーディネーションを担当。1999年、(株)エイブス入社。MLV系/ソースクライアント系PMとして約10年修練を積む。現(株)メディア総合研究所にてローカライゼーション部門を立ち上げ、2014年より翻訳をマーケティング的な視点で再構築するべく現職となる。

報告者:石飛千恵(個人翻訳者)
 


平野: 今日は、PMである皆様にざっくばらんに語って頂きたい。まずは、業務に関する悩みを伺いたい。
柴山: 祝日や機械翻訳(MT)の案件に対応できる翻訳者が少ないこと。
田辺: 以前はプロジェクトが終わると達成感があったが、最近はプロジェクトの切れ目がなく、終わりが実感できないこと。
内山: 様々な立場の人が違った要求を出し、矛盾した要件がPMに届くこと。いかにこの矛盾を解決・整理し、全員で合意するかが課題。
平野: 矛盾と思える要求にどう対処する?
田辺: 客のタイプを知り要求をじっくり聞く。ランゲージ担当やエンジニアが直接説明することも。
内山: 地道に説明し、説得する。

機械翻訳(MT)とポストエディット(PE)の今後について

田辺: 昔、翻訳メモリの信頼性は低かったが、今では技術翻訳に不可欠。MTも同様になるのでは。
柴山: ポストエディターの意識が変わっていくだろう。今回のような機会でMTの利点を周知したい。MTは翻訳ソフトではなく、あくまで入力支援ツールとして、使える訳があればラッキーくらいに考える方がよい。MTエンジンの能力を判断し、価格とのバランスを考える必要がある。
内山: 以前よりGoogle翻訳等でMTは一般的になり、その品質の低さも消費者に知られている。また、クラウドの出現でソース文書の公開が早くなったため、公開直後にMT版を、後追いでPE済みの和文を公開する等、新しいワークフローが必要。

アジャイル対応サービスについて

田辺: 従来は一度納品すればプロジェクトは終了したが、アジャイルでは製品が出た後のアップデートにも対応するため、終わりがない。
内山: 事前に分量がわからず、翻訳者の忙しさはプロジェクト次第。
田辺: 少量でもPMのタスクはその都度発生するので、負荷が大きい。
柴山: ベンダーの手間・コストは大きくなるが、顧客にとっては早めに修正ができるため、アジャイルは効果がある。お客様第一でやるしかない。
平野: どこまで顧客のために頑張れるか?
柴山: 自社に不利になったり、PMが倒れたりしたら本末転倒だが、顧客に喜んでもらってこその仕事だと思う。
田辺: 付き合いが長いと顧客の好みがわかる。チームにそれを伝えていくのもPMの仕事。
内山: 顧客とは、お金を払う人とコンテンツの最終消費者の双方を意味する。両者を満足させることが重要。コンテンツ要求をしっかり理解し、まとめていくのがPMの仕事だ。

グローバル化による日本市場縮小の危機感について

田辺: 日本オフィスは人件費が高いので、必要な事のみ行うよう指示されている。細かい要求に対応できる日本オフィスは「売り」であるが、仕事が海外に流れている実感はある。
内山: 多言語の単なるローカライズと、その土地にあった個別化は異なる。差別化で存在価値を高めるのがミッションとなる。
柴山: 危機感はあるが、日本人特有の曖昧な要求に対応できるのは、日本オフィスの強み。日本人スタッフに対応して欲しいという要望も増えている。

 
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