3-3 まだ間にあう、経営者、人事担当者、翻訳者が知っておきたいマイナンバー制度
戸國大介 Daisuke Tokuni
社会保険労務士事務所ライトハウス 代表(特定社会保険労務士・産業カウンセラー)大手旅行会社の人事部で、労務管理、採用、人事制度を担当後、EAP会社にて、企業のメンタルヘルスや労務問題予防のためのコンサルティングやセミナー講師として活動。その後、社会保険労務士事務所ライトハウスの代表に就任。社会保険労務士として10年以上の経験と年間500件以上の相談事例を活かし、企業のリスクマネジメントや労務管理全般を支援している。
報告者:熊谷玲美
このセッションでは、マイナンバー制度について理解し、企業(翻訳会社)や個人翻訳者が行うべき作業やスケジュールを確認することで、マイナンバーをめぐる不安を解消することを目指した。
マイナンバーとは何か
マイナンバーは、日本の全住民に通知される12桁の番号。当面は社会保障、税、災害対策の分野で利用することになっている。社会保障の不正受給の防止や、国民の利便性の向上、行政手続きの効率化などの効果がある。
マイナンバーの利用開始は平成28年からだが、国・地方公共団体等の情報連携やポータルサイトの運用は平成29年からになる。通知カードは全員に送られるが、個人番号カードは申請手続きが必要で、10年(20歳以上)という有効期限がある。個人情報保護法の特別法であるマイナンバー法には、情報漏えいや不正利用に対する重い罰則規定があり、企業や従業員にも適用される。
マイナンバーと企業実務
マイナンバーの導入準備ができていない企業はまだ多い。10月に実施した調査によると対応完了した企業はまだ6.4%だ。マイナンバーを取り扱う企業には、基本方針と取扱規程を定める必要がある。企業は、従業員とその家族のほか、外部の個人翻訳者からもマイナンバーを取得する必要があるが、安全管理措置をきちんと決めてから取得しないと紛失や漏えい等のリスクが生じる。安全管理措置は、企業規模ごとにできることから始めてほしい。専門家(顧問弁護士、社労士、税理士)に相談するのもよい。
個人翻訳者から企業へのマイナンバー提出は、平成28年中の契約時や取引先が指定する時期に行う。実際にはすぐにマイナンバーが必要になることはなく、支払調書にマイナンバーが記載されるのは平成28年1月以降の支払分から。個人翻訳者が確定申告にマイナンバーを記載するのは平成28年分(平成29年3月提出分)からになる。マイナンバーを提出しないことの罰則はない。
これだけは押さえたい安全管理措置
企業は「基本方針」「取扱規程」を定め、「安全管理措置」を講じる必要がある。重要なのは安全管理措置を実施することだ。委託先の安全管理措置の監督も必要になる。特に押さえておきたいのは「担当者の明確化」「担当部署、担当者、従業員への定期的な教育」「パーティション設置やのぞき見されない座席配置」「鍵付きキャビネなどへの書類の保管」「退職・契約終了後の書類の廃棄」「ウイルス対策ソフトの導入・アクセスパスワードの設定」など。
マイナンバー対策は、企業にとって手間が増えることになるが、これを重要な個人情報・顧客情報の管理を見直す機会に変えてほしい。自社のリスクを把握して対応することで、顧客から選ばれる企業にチャンスになる。高価な投資は必要ないので、できることからやってほしい。そうした取り組みが最終的には企業の評価になる。そして、マイナンバーを提出する個人翻訳者にとって、安全管理措置を講じていることが、取引をする企業の基準になる。