第7回「翻訳・通訳業界調査」 クロス集計等の手法を用いた分析結果報告〈個人の部〉
JTF業界調査委員会
日本翻訳連盟(JTF)では、2004年に翻訳業界の現状を数量的に把握するため、業界調査を開始しました。2017年より通訳業界も調査対象に加え、この度、7回目となる「翻訳・通訳業界実態調査」を実施し、分析結果を「2022年度 翻訳通訳白書」として発行します。
今回の本特集では、前回の〈法人の部〉に続き、2023年JTF定時社員総会基調講演で報告された〈個人の部〉の調査分析結果をお伝えします。
個人の部では、前回(2020年)を大きく上回る812名の翻訳者の方にご回答いただいたことをお礼申し上げます。
1 個人翻訳者・通訳者の概要
2 景況感の変化とコロナ禍の影響
3 機械翻訳(MT)/ポストエディットの状況、「インボイス制度」への対応
1 個人翻訳者・通訳者の概要
●翻訳通訳とも女性7割、40~50代が多い
はじめに、バックグラウンドとして、個人翻訳者と通訳者の概要についての説明を述べる。まず、アンケート回答者の属性を性別、年代別にみたグラフ結果、翻訳者の年収を性別、年代別、経験年数別にみたグラフ結果、また通訳者の年収を経験年数別にみたグラフ結果を示す。
図1は、アンケート回答者を性別で分けた円グラフである。通訳者・翻訳者ともに女性が約7割を示しており、前回の2020年のデータと大きな変わりはない。
図2は、翻訳者の性別を年代別で比較した棒グラフ、図3は通訳者の同様の比較である(青い棒グラフが女性、オレンジが男性)。
翻訳者は、女性の場合40~50代の割合が高く、男性は60代以上から高くなり、構成比が逆転していることがわかる。
40~50代の割合が高いことは、通訳者についても同じことが言える。これも前回の2020年のデータと変わらない内容である。
●翻訳者の年収は大きな変化なし
次は、収入別でみた結果をまず翻訳者の年収から示す。
図4は、翻訳者の年収を前回2020年と比較した棒グラフである。2020(青色)年と2022年(オレンジ色)で同じような棒グラフになっており、大きな変化はなかった。また、前回と同じで、「300万~400万円未満」の割合が最も高い数値を示している。
図5は、翻訳者の年収を性別で内訳した棒グラフである(オレンジ色が男性で青色が女性)。この棒グラフの特徴的な点として、800万円以上から男性の構成比がやや高くなっている。
図6は、翻訳者の年収を年代別で内訳した棒グラフである。濃い青色で示されているのが20代で、その多くは年収400万円未満で分布している。30代は概ね700万円未満で分布している。
翻訳者の年収を経験年数別で示す(図7)。この棒グラフの特徴的な点は、経験年数が1年未満の翻訳者は年収100万円未満が多いこと、経験年数1~2年未満は400万円未満までに分布していることである。経験20年以上は反対に、800万円以上からの割合が高い傾向にある。
●通訳者の年収は二峰化
次に通訳者の年収について、2020年と比較したものを示す(図8)。
通訳者の年収は、2020年(青色)と2022年(オレンジ色)ともに「400万~500万円未満」に山があることは変わらないが、2020年グラフは山が一つの単峰性のグラフであるのに対し、今回(2022年)のグラフの特徴として「400万~500万円未満」と「1000万~1500万円未満」にも山がある二峰性の棒グラフになっていることがわかる。
次に、通訳者の収入を経験年数別に見た棒グラフを示す(図9)。
図9で特徴的なのは、翻訳者の場合は、1年未満の回答者は「100万円未満」の年収が最も多かったのに対して、通訳者については「400万~500万円未満」が最も多かったことである。