日本翻訳連盟(JTF)

翻訳会社のCATツールエキスパートが「翻訳支援ツール」を語り尽くす

1.価格(導入費用・ライセンス費用)
2.セキュリティ
3.TMとエディタの連携および解析機能
4.機能と操作性

はじめに

大量の文書やコンテンツを取り扱う「産業翻訳」において、翻訳支援ツール(CATツール)は今や必要不可欠な存在と言っても過言ではありません。

翻訳会社で勤務するプロジェクトマネージャー(PM)やリンギストにとっては、毎日のようにCATツールを使用し、自身のスマホよりもずっと長い付き合いだという方も少なくないと思います。そんな翻訳業務を支える頼もしい相棒であるCATツールですが、当然のことながらツールによって向き・不向き、そして長所と短所があります。

今回は、そんなCATツールの特徴について、翻訳会社に勤めるCATツールエキスパート(自称)4名でディスカッションを行いたいと思います。

【参加者】翻訳会社で勤務するシニア社員

A(司会):翻訳会社勤務PM(翻訳業界20年)
B:翻訳会社勤務テクニカルサポート兼エンジニア(翻訳業界20年)
C:翻訳会社勤務エンジニア(翻訳業界20年)
D:翻訳会社勤務PM兼リンギスト(翻訳業界25年)

※議論の内容および議論内で出てくる動作・検証結果などの情報は、参加者の経験および主観に基づいたものであり、各ツールの最新の機能や動作を保証するものではありませんのでご了承ください。

A:皆さん、本日ははお忙しい中お時間をいただきありがとうございます。

本日は「CATツールの向き・不向き、そして長所と短所」についてのディスカッションということですが、中でも最近特に使用頻度の高い4つのツールを対象に議論したいと思います。

まずはTRADOS。CATツールの老舗かつ最大手であるTRADOSは翻訳業界で働く人で知らない人はいないでしょう。(本ディスカッションではTRADOS Studioを対象としています。)

次に、memo Q TMS。momo Q TMSは欧州を中心に展開するハンガリー発のCATツールで、ここ数年で日本にも幅広く普及しました。

3つ目はPhrase TMS。TRADOSのようなインストール版とは異なり、Cloud版のCATツールとして翻訳者やチェッカー・校正者からも人気が高いツールです。

最後にXTM。こちらもCloud版のツールで、欧州を中心に展開しているCATツールです。

今回のディスカッションでは、CATツールのメジャーどころとも言えるこれら4つのCATツールを対象に、四点の視点①価格、②セキュリティ、③TM(翻訳メモリ)④機能と操作性で議論を進めていきたいと思います。

もちろん、ツールによってそもそもの設計やコンセプトが違うので、単純比較はできませんがその前提で議論していきましょう。

1.価格(導入費用・ライセンス費用)

A:まずは「価格」についてです。冒頭でも申し上げたように、我々のように産業翻訳に携わるものにとって、CATツールは業務上必要不可欠な存在です。しかしながらその導入には費用がかかり、それも決して少ない金額ではありません。

誰もがもっとも効率的なツールを、できるだけ安価に導入したいと考えるところですが、実際のところいかがでしょうか?

まずは価格面において、どのCATツールが最も安価で効果的だとお考えでしょうか?

B:いきなり超難関トピックですね。これは導入する会社の規模や形態(個人または法人)、解決すべき課題にもよるので一概には言えないのですが、それだと話が進まないので、まずはクラウド版(Phrase TMS、XTM)とスタンドアロン版(TRADOS Studio、memo Q TMS)に分けてお話しします。

クラウド版2種(Phrase、XTM)は今でこそ大きな広がりを見せていますが、CATツールとしては比較的新しいツールで、日本で普及し始めたのもここ数年の話です。老舗のTRADOS と比べるとまだまだ歴史が浅いツールですね。

さて、このクラウド版2種ですが、従来型のツール(=スタンドアロン型)と比べて料金プランが大きく異なります。

それは、スタンドアロン型のCATツールがライセンス課金型であるのに対し、クラウド版は、処理量ベースによる従量課金型であるという点です。

C:TRADOS やMemo Qは、1ライセンスいくら(=XX円)という形で課金されるのに対し、Phrase、XTMでは使用した数量(文字数/ワード数)を元に課金されるということですね。

B:そうです。そのため、一定数を超えるユーザーがツールを使用する場合は、クラウド版の方がスタンドアロン版よりもリーズナブルになるかもしれません。

またクラウド版の場合、依頼元(翻訳会社またはエンドクライアント)がライセンスを所有している場合、依頼元が作成・管理するプロジェクトに限り、作業者側(翻訳会社または翻訳者)はライセンスを所有していなくても作業が可能です。

A:作業者側(翻訳会社または翻訳者)にはとても良い課金システムですね。TRADOS Studioにはフリーランス版のライセンスもありますが、それでも決して安い金額ではないので。

C:そうですね。この作業者側はツールライセンスを購入する必要がないという課金システム・料金体系はクラウド版が普及した要因の一つと言えると思います。

A:そうすると、クラウド版とスタンドアロン版を料金面で比べると、クラウド版が割安になるということでしょうか?

B:そこが難しいところで、必ずしもそうとは限りません。まずクラウド版の初期導入費用はスタンドアロン版に比べて高額です。一般的にスタンドアロン版の1ライセンスが数万円~数十万円であるのに対し、クラウド版はプランにもよりますが、~百万円単位になります。そのため、先にも申し上げた通りツールを使用するユーザーが多ければ、クラウド版の導入が効果的ですが、少ないユーザーから小規模に始めるという場合は、スタンドアロン版が割安になると思います。

A:クラウド版とスタンドアロン版の違いがわかったところで、クラウド版・スタンドアロン版の各ツールについて議論したいと思います。

まずクラウド版ですが、Phrase TMSとXTM、ずばりどちらのツールの方が割安でしょうか?

B:導入プランによっても変わってくるので一概には言えません。Phrase TMSもXTMも実際に使用した数量によって変動する従量課金制を採用しています。その大枠自体はそれほど変わりませんが、Phrase TMSは文字カウント(=ファイル解析)も従量課金の対象に含まれるため、翻訳や校正などの翻訳作業以外の処理を行った場合も課金対象となるので、若干ではあるものの割高になるかもしれないですね。

A:なるほど。同じ従量課金制でもツールによって違いがあるんですね。

では続いてTRADOS Studioとmemo Q TMSではいかがでしょうか?

B:この2つだとmemo Q TMSが割安かもしれないですね。

そもそもライセンスの費用がTRADOS Studioに比べるとmemo Q TMSの方が割安ですが、それ以外にも割安になるポイントがいくつかあります。

まず、TRADOS Studioの場合、ライセンスに係る費用以外にアップグレード費用があります。これはツール(ソフトウェア)の更新時にかかる費用で、必ず毎回アップグレードしなければいけないわけではないのですが、ある一定のバージョンを超えるとさかのぼってのアップグレードすることができなくなります。そのため、毎年ではないもののツールを使い続ける限り、どこかで必ず発生する費用と言えます。

また、memo Q TMSの場合、作業者(翻訳会社または翻訳者)にライセンスを貸与することが可能です。これはクラウド版の特徴のところで先述したことですが、ライセンスを持つ依頼元(翻訳会社またはエンドクライアント)が作成・管理するプロジェクトに限り、作業者(翻訳会社または翻訳者)は、ライセンスがなくとも作業を行うことができるというもので、プロジェクト全体でのライセンス費用の低減につながります。

A:なるほど。大規模ユーザーでの利用(仮に20名~以上)の場合はクラウド版が効果的で、Phrase TMSとXTMを比べるとXTMが割安の可能性があり。小規模スタート(~5名)の場合はスタンドアロン版、特にmemo Q TMSが価格的には安く済むかもしれないということですね。
もちろん、導入プランや、この後のトピックにあるセキュリティや、求める機能面によって費用対効果は変わってくるので、そのあたりも踏まえて、議論を進めましょう。

2.セキュリティ

A:次のトピックは「セキュリティ」です。ツールやソフトウェアを導入する際、多くの企業が最も重要視するのが安全性、即ちセキュリティです。

重要な機密文書やお客様のデータを取り扱う翻訳会社にておいて、ある意味では価格よりも重要な要素と言えます。当然CATツールの開発元もセキュリティの重要性は理解していて、特にデータの管理(漏洩)、安全性については、各社共に高いレベルでのセキュリティのポリシーを公開していますが、実際のところいかがでしょうか?
これらメジャーどころのCATツールでも、安全性に違いはあるのでしょうか?

B:ツールそのものの安全性という意味では大きな差はないと思います。

いずれのツールも高いレベルでの安全性を確保していますので、安心して使用していただいて問題ありません。※詳しくは各ツールのセキュリティポリシーをご確認ください。

A:いずれのCATツールも安全性に問題がなく、セキュリティ面でも特に違いはないということですね。

B:はい。一般的な意味での安全性という点については問題ないでしょう。どのツールも高いセキュリティ水準をクリアしていて、安全なのは間違いないと思います。
しかし、実際にツールを使う作業環境、そして作業方法によっては安全性に違いが生じる可能性はあります。

A:なるほど。ツールそのものに安全性の差はなくとも、運用面でリスク差が生じるということですね。

B:はい。まず、クラウド版とスタンドアロン版での違いが考えられます。

クラウド版の場合、基本的には全てのデータをクラウド上でやり取りすることになり、その管理もサーバー上で一元化されます。つまり、固有の環境、例えば作業者のPCなどから不本意にデータが流出してしまうということは非常に起こりにくいと考えらえます。

一方、スタンドアロン版の場合は、データを個別にやり取りして、各作業者の固有の作業環境で作業を実施します。そのため、各作業データの安全性は、各作業者の作業環境とデータ管理状況に依存してしまうのです。

C:データ管理について、一応補足させていただくと、もちろんデータのやり取りには専用の共有サーバーやデータ管理システムを使用しますし、各作業者の皆様もデータ管理には最新の注意を払ってくださっていますので、情報漏洩の問題が生じたケースというのは、私も聞いたことはありません。

しかしながら、データへのアクセス、個別環境からのデータ取得(ダウンロード)が仕組みとして制限されているという点を考えると、クラウド版の方がセキュリティ上のリスクは低いと考えられます。

A:たしかにそれはありますね。物理的にデータを取得できない以上、漏洩の可能性は極めて低いと言えます。

では、クラウド版のCATツール二種、PhraseとXTMを比較した場合はいかがでしょうか?

クラウド版である以上、大きな差はないと考えて良いでしょうか?

B:そうですね。大きな差はないと思います。どちらもクラウドサーバー上でプロジェクトを作成して、ワークフローを管理するタイプのCATツールですので。
ただし、敢えてどちらかを選ぶとするなら、私はXTMかなと思います。

その理由は、XTMはプライベートクラウドを立てることができるという点にあります。

プライベートクラウドについては、詳しくは時間がある時にググってもらえればと思いますが、簡単に言うと、クラウド上にその会社専用のサーバーを構築するということです。

ひと昔前だと、自社のオフィス内にサーバーを構築して自社内で全てのデータを管理していたという経験がある方もいらっしゃるかと思います。あれはクラウドではなく物理サーバーになりますが、ある意味ではあれに近い感じでしょうか。

サーバー環境の独立性が確保されることから、自社のデータが他の利用者に漏洩したり、他の利用者の利用状況に影響を受けるといったリスクが最も低い環境と言えるのです。

A:なるほど。XTMが北米や欧州の大手企業に導入されているのはその辺が関係しているのかもしれませんね。

B:あと、もう一つの理由として、XTMは原則としてXTMのオンライン上のエディタでしか作業ができないという点が挙げられます。

Phrase TMSはDesktop Editorを使ってローカル(作業者の固有環境)で作業することができるという点が便利ではある反面、XTMに比べるとセキュリティ上のリスクが高いと言えるでしょう。もちろん、固有環境とはいえ担当作業者はワークフロー上でID管理されており、指定のツール以外ではデータを開けないので、情報漏洩のリスクは極めて低いと思います。

あと、ここではスタンドアロン版として取り扱っているTRADOSやMEMO Qもオンラインでの作業を前提とした、サーバー版などもリリースしていますし、安全性には十分に配慮しています。決してクラウド版に劣っているというわけではありません。

あくまでも、一般的な運用面を比較した場合ということです。

A:ありがとうございます。お客様から求められるセキュリティ要件は年々厳しくなってきているように感じます。特に最近はMT(機械翻訳)や、生成AIなどの技術革新に伴い、情報管理にはこれまで以上に気を配らなければいけません。

セキュアな環境でツールを導入するには、ツールそのもののスペックはもとより、導入後の運用ルールをいかに設けるかが、重要なのかもしれません。

3.TMとエディタの連携および解析機能

A:では、次のトピックに移りましょう。次のトピックは、TM(翻訳メモリ)についてです。

今回はその中でもエディタとの連携のしやすさ、そして解析機能に絞って議論したいと思います。言うまでもなく、この二つはCATツールとして最も重要な機能と言っても過言ではないでしょう。この二つがダメダメだと、そもそもCATツールを使用する意味がありませんので。

D:TMとエディタの連携、これは翻訳作業時にいかにスムーズかつ機能的にTMを参照できるかということですよね?

だとすると、UIのデザインや配置(表示箇所)、ボタンなどの操作面での動線などの違いはあれど、大きな違いはないと思います。いずれのツールも、所定のエディタで翻訳作業を進めていく中で、TM内に一致する原文が見つかった場合に、その一致率に応じて参照されるというコンセプト自体は大きく変わりません。

C:そうですね。もちろんツールによって操作方法からくる難易度の違いや、TMを参照する際の速度に差がある場合はあります。私は個人的にはPhrase TMSのUIは直感的でわかりやすくて好きですね。

D:しかし、TMを参照して一致率を検出するロジックの精度には差があると思います。

ここで言う「差」というのは優劣を示すものというよりは、単純な違いといった方がいいかもしれません。

これは、TMの解析機能を使用するとわかりやすいのですが、TMによるデータ解析には各ツールで差がでることがしばしば見受けられます。同じ条件で、同じデータを異なるツールで解析した際に、結果が大きく異なるケースがあるということです。

これは、各ツールで異なるロジック、アルゴリズムが採用されていることによるもので、ある意味普通と言えば普通なのですが、業務を担当するPMやリンギストにとっては悩みの種でもあります。ツールによって実際の作業ボリュームが変わってしまうため、例えば予定していた翻訳者が体調を崩してしまった場合、代替の翻訳者を探す際にも、そのツールに対応可能ということが第一条件になってしまうからです。

B:確かに解析結果のロジックやアルゴリズムについては、いい加減、各ツール間での標準モデルを確立してほしいところですね。

D:そうですね。それが実現するとCATツールユーザーとしては安心ですし、そこがシンプルになることで、ツール間の互換性がより高まって、相乗効果が生まれると思うんですけどね。

まぁ、ツール間での解析結果の差異については、今後改善が進むことを期待するとして、解析のロジックそのものに関しては、私はTRADOS Studioが最もリーズナブルで、フェアな仕様になっていると思います。

C:私もそう思います。特に解析結果のレート項目がわかりやすいのと、解析時に設定を選択できるのが助かります。

D:例えば、XTMだとかInternal Fuzzy(=内部あいまい一致)がデフォルトで設定されていて変更できません。Internal Fuzzyについては確定訳文(=TMに登録されているもの)がないけど原文が類似しているからその分をFuzzy扱いするというものですが、その適用によっては色々な意見がありますので、少なくとも、設定するかしないかは選べるようになってほしいです。

C:あとTRADOS Studioの場合、ある条件下の数字を変数化して作業対象外とすることで、作業ボリュームを減らすことができたり、TMだけでなく指定したバイリンガルファイルから当該セグメントのコンテキスト情報を参照したうえで解析結果に反映するコンテキストマッチ(=Perfect Match)など、とても有効なオプションが数多く実装されているのも助かります。

D:解析時のオプションと言えば、memo Q TMSも良いですね。リソース毎の解析値が書き出せるのはいいところだと思います。例えば、TMが二つあった場合、二つのTMを参照してマッチした場合の解析と、各TM毎の解析と2通り確認できます。

また、Tradosと同じ(似たよう)な解析にするか、memo Q TMS独自のパターンにするか、選択することもできます。

A:なるほど、TMの解析機能に関しては、やはり最大手かつ最も歴史のあるTRAODSに一日の長があるのかもしれませんね。

さて、このトピックでは特にTMとエディタの連携と解析機能に絞って議論しましたが、TM以外にも、ワークフロー設計や、用語管理、校閲機能など、様々な機能が備わっています。

これらCATツールの機能の様々な便利機能とその操作性については次のトピックで議論していきましょう。

4.機能と操作性

A:さて、ここでちょっと話がそれるのですが、皆さんはモノを購入するとき、まず何に着目しますか? そうですね、私は先日新しいヘッドホンを購入したのですが、それを例にしましょうか。デザイン、スペック、メーカー、価格、機能など、色々な検討材料がありますが、皆さんなら、特にどの点に着目して検討しますか?

B:まずは価格かな。どのくらいの頻度で使用するかにもよりますが、あまり高額なものは避けたいですね。今は5万円超えのハイエンド商品もあるじゃないですか。
C:私は機能ですかね。ノイズキャンセリングは絶対欲しい。その上で低価格なものを選びます。

D:難しいところですが、価格とメーカー、あとワイヤレス(Bluetooth)はマストですね。メーカーというのは信頼性っていう意味で、やはり国産メーカーのものがいいです。あとは重さなんかも重要ですね。ものによってはずっとつけてると耳が痛くなったりするので。

A:ありがとうございます。まあだいたいそんな感じですかね。メインの機能を見て、価格を見て、あと使いやすさやデザインといったところでしょうか。

もちろん、絶対にほしい機能があるかどうかや、予算が決まってるかによっても検討のプロセスは変わってきますが、だいたいこんな感じだと思います。

ツール導入に関しても同様で、多くの場合、まずはそのツールの核となるメインの機能、価格、そして安全性(セキュリティ)が検討材料になると思います。

しかし、実際にツールを使う側の人間としては、それよりも「操作性」こそが最も気になる要素とも言えます。どんなにハイスペックで機能が豊富でも、操作性が著しく低くて使いづらければ、元も子もありません。

そこで本ディスカッションの最後のトピックとして、CATツールの機能と操作性について議論したいと思います。

ずばり聞きます。どのCATツールが一番使いやすいと思いますか?

先述の通り単純比較は難しいと思うので、「このツールにあるこの機能が特に便利」や、「この機能に関してはこのツールの方が優れている」といった論点でも構いません。

D:ヘッドホンの例はあまり参考にならない気がしますが(笑)、それはさておき。

操作性という点では、私はPhrase TMSは非常に使いやすいと思います。

特に翻訳や校正などの実作業を行うにあたって、UIや画面の配置が見やすくて良いですね。作業の効率が上がります。機能的というよりは、シンプルに使いやすいという印象です。

C:私は業務上、様々な形式のデータを扱うことが多いので、TRADOS Studioの豊富な機能に毎回助けられています。特にフィルタ設定の種類が豊富で、他のCATツールではできないような細かい点まで設定できるのがとても役立ちます。

A:TRADOS Studioの機能は確かに豊富ですね。私も以前にValidation機能のカスタマイズを研究したことがありますが、かなり細かい設定ができるので、大型で細かい仕様やスタイルが定められている翻訳プロジェクトでは、大きな助けになります。

C:Validation機能に関しては、MEMO QのQAツールが使いやすくて便利です。

個人的には、Validationやフィルタ設定などの機能面では、スタンドアロン版>クラウド版かなという印象です。

D:スタンドアロン版とクラウド版という点では、作業者目線で言うと、クラウド版の方がファイルの取り込みなど前準備が不要というのは便利だと思います。スタンドアロン版も作業用データが、いわゆる「パッケージ」になってからは、大きな手間はありませんが、それでも所定のURLにアクセスするだけで作業が始められるというのは、やはり楽ですね。ファイルを取り違える心配もありませんし。

一方で、CATツールのサーバー落ちてしまったりした場合に、作業が出来なくなってしまう可能性もゼロではないので、その点ちょっと怖いという思いはあります。

B:その点に関しては、デスクトップツールが用意されているPhrase TMSは安心です。

もちろんPM側による事前準備は必要ですが、サーバー側で何か問題があってクラウド上のデータにアクセスできなくなったとしても、デスクトップツールで作業を進めることが可能です。

納期設定が厳しいプロジェクトでは、万が一の代替案として有効ではないでしょうか。

C:あと、対応可能なデータ形式の豊富さという点で、割と汎用性が高いのはXTMです。

なんと、CATツールの中で唯一、イラストレーターのデータ形式(.ai)を読み込むことが可能です。.svgはフィルタを調整することで、TRAODS Studioやmemo Q TMSでも処理がかのうですが、.aiを直接読み込むことができるのはXTMだけです。

ポスターやイラストデータの処理が多いプロジェクトでは、非常に助かります。

A:そうなんですね。.aiを直接読み込むCATツールがあるとは思いませんでした。

毎回、テキストを取り出して、翻訳して、コピー&ペーストして、、を繰り返してました。

D:私は操作性の高さ(=使いやすい)という点でPhrase TMSを上げましたが、用語集連携に関してはTRAODS StudioのTermbaseはとても有効だと思います。TRAODS Studio以外にMultitermのライセンスを所有している必要がありますが、TMと合わせてTermbaseを連携することで、用語に関するトラブルが随分減ったと感じています。

C:確かにMultitermは便利ですね。でもmemo Q TMSにも「Qterm」がありますよ。Memo Q TMSと連携しているオンラインの用語管理システムで、お客様にアカウントを発行すれば、お客様側でもオンラインで用語の確認ができます。

A:様々なご意見ありがとうございます。本当に色々な機能があり、一概にどのツールが良いという結論は出せないですね。そもそも、操作性の高さ、機能の豊富さに関しては、それを議論する視点によって、その評価が大きく変わってきます。

いずれのツールも素晴らしい機能が実装されており、使い方を少し変えるだけで大きな効果が得られることも少なくないので、ぜひ色々試してみてください。

さて、本日は4種類のCATツール(TRAODS Studio、memo Q TMS、Phrase TMS、XTM)について、価格、セキュリティ、TM、操作性の4つの視点から議論しました。

導入する会社の規模や形態(個人/法人)、性質(クライアント/翻訳会社/翻訳者)、取り扱うプロジェクトのタイプなどによって、最適なツールは変わってきます。

今回のディスカッション以外にも様々な意見があると思いますが、ツールを検討する際の参考としていただければ幸いです。皆さん、どうもありがとうございました。

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