JTF新規法人会員紹介:株式会社ITP
総合力と柔軟性で個別ニーズに対応
前回からの新連載として、日本翻訳連盟(JTF)に近年ご入会された法人会員を1社ずつ紹介しています。
第2回は、1916年に京都で創業し事業を拡大してきた、株式会社ITPです。
事業内容、特長、業界団体への入会動機、今後の展望などについてJTFから新規法人会員に質問し、いただきました回答からお届けします。
●業界団体への入会の動機を教えてください。
再入会になりますが、日本翻訳連盟様の幅広いネットワークや豊富な情報に触れることで、翻訳に関する知識や視野をさらに広げたいと考えております。
●貴社の製品・サービスにおける独自の強みや競争優位性を教えてください。
我々は、60言語以上に対応可能な翻訳体制を持ち、ツール、専門人材、豊富なノウハウを組み合わせて柔軟に対応します。特に「IT・情報通信」「技術・エンジニアリング」「マーケティング・広報」「産業・エネルギー」「観光・ホスピタリティ」「一般ビジネス」に強みを持つほか、医療・医薬、学術、法律・金融などの高度専門領域にも対応できる総合力が強みです。
●貴社が翻訳業界で目指す貢献や目標は何ですか?
私たちは「お客様基準の品質」を大切にしています。翻訳はただ言葉を置き換えるものではなく、お客様ごとに異なる目的やニーズがあります。そのため、状況に合った価格設定や最適なソリューションを提案し、期待に応えることを目標としています。
●直近1~2年で、特に誇れるプロジェクトや成果を教えてください。
特に文脈のない短文を多言語に翻訳する際に、誤訳のリスクが大きいという課題に直面しました。たとえば英語の「Clear」は「晴れ」や「消去」など複数の意味を持つため、原文の意図と異なる翻訳結果につながる可能性があります。
この課題に対し、原文の文脈や意図を正確に反映できるソリューションを開発しました。その結果、40言語以上を対象とした大規模プロジェクトにおいて高い精度と顧客満足を実現することができました。これが直近1~2年で特に誇れる成果です。
●貴社が採用している最新技術やイノベーションの例があれば教えてください。
弊社では、GoogleやDeepLといった汎用性の高いNMT翻訳(ニューラル機械翻訳)に加え、独自に構築したNMTシステムも運用しています。汎用エンジンは一般的な文章の翻訳に強い一方で、特定分野の文章では誤訳が生じやすくなります。そのため、特定分野向けの翻訳では、その分野に限定した学習データを用いることで翻訳品質を向上させています。課題は、十分な学習データを確保できるかどうかです。
さらに、機械翻訳だけでなく生成AIの活用も進めています。特に用語抽出などの特定タスクには有効ですが、ハルシネーション(事実と異なる生成)の問題があるため、その対策が今後の課題です。
●業界関係者やJTFジャーナルの読者に向けて、貴社のビジョンやメッセージを自由にお聞かせください。
2016年のNMTの登場、そして近年のChatGPTをはじめとする生成AIの普及により、翻訳業界は大きな変革期を迎えています。今後10年も、さらに大きな変化が訪れるでしょう。
しかし、翻訳の現場を深く理解している方であればご存じの通り、最新技術だけでは解決できない課題も依然として数多く存在します。業界や分野、企業ごとに適切な言い回しや専門用語が異なるため、今後はよりカスタマイズされ、特定分野に特化したシステムや手法が重要になっていくと考えています。
私たちは、こうした可能性を最大限に活かしながら、言語の壁を取り払い、より円滑なコミュニケーションを実現するために尽力していきます。
法人概要 法人名:株式会社 ITP(ITP INC.) 創業年:1916年 所在地:京都府京都市中京区丸太町通小川西入 主な事業内容:印刷、デザイン、編集、デジタル制作(Web含む)、翻訳、販売促進、マニュアル企画制作、広告制作、データベース構築などの情報サービス URL:https://www.itp.co.jp/ |