2-3 第1部:MT Live ~機械翻訳の担うべき役割~
パネリスト:
熊野 明 Kumano Akira
東芝ソリューション(株)プラットフォームセンター。
1980年代から機械翻訳技術を研究開発。
2010年からThe翻訳シリーズの企画・製品化を担当。
アジア太平洋機械翻訳協会理事。
玉井 康裕 Tamai Yasuhiro
(株)クロスランゲージ 専務取締役、JTF監事。
2009年、株式会社クロスランゲージ参画。(株)ワンソースジャパン取締役、
レンジャーシステムズ株式会社取締役、(株)JTBプランニングネットワーク顧問。
松永 務 Matsunaga Tsutomu
(株)NTTデータ技術開発本部サービスイノベーションセンタAIソリューション推進室
統計的機械翻訳に関する技術開発・サービス開発に従事。
博士(工学)。
奥山 尚一 Okuyama Shoichi
久遠特許事務所代表、弁理士。Ph.D。
1990年に弁理士登録、2011年~2013年日本弁理士会会長。
知的財産戦略本部有識者本部員、日本知的財産翻訳協会(NIPTA)副理事長。
エイバック特許翻訳上級コース講師。
疋田 正俊 Hikita Masatoshi
(株)エイブス 技術翻訳スクール校長。
2000年1月よりエイブス技術翻訳スクールの設立に参加。
昭和60年度電気化学協会棚橋賞受賞。延辺大学(中国)非常勤講師。
(株)疋田翻訳事務所 社長。
遠田 和子 Enda Kazuko
日英翻訳者、翻訳学校講師。
大手電機メーカーにて翻訳業務に就いた後、フリーランスになる。著書、訳書、多数。『通訳翻訳ジャーナル』(イカロス出版)にて「英訳ドリル」連載中。
『JTFジャーナル』編集委員として、同誌WordSmyth Caféコーナー担当。
モデレーター:
渡邊 麻呂 Watanabe Maro
(株)十印 代表取締役社長、JTF理事
1999年、(株)十印開発入社。関連人材派遣会社にて営業職に従事。
2004年、(株)十印ヒューマンフロンティア代表取締役に就任。
2005年、(株)十印代表取締役に就任。
報告者:平岡薫(株式会社 エイブス)
渡邊:会場の参加者で実際にMT(機械翻訳)に触れておられる方はどれくらいでしょう。1/5~1/6位か。本日は特許、IT、一般文書の課題英文をMTメーカー3社に今からお渡しし、出力された翻訳を分野の専門翻訳者の方に第2部で講評いただくことにします。まず、MT製品の紹介をお願いします。
東芝 The翻訳プロフェショナル
熊野:機械翻訳は「機械と翻訳する」という意味と解釈し、人間と機械が協業すべきと考えている。The翻訳プロフェッショナルはWindowsアプリとして動作し、技術としてはルールベース翻訳を基本としながら、翻訳メモリの技術も取り入れている。また、文章の全体や構造を参照した処理も行い、例えば、「中国」の英訳では国名か地方名かを判断して訳している。翻訳者に使いやすい対話翻訳や、Tradosの翻訳エンジンとしての動作、Microsoft Word、Excel、PowerPointのアドイン機能も提供している。
渡邊:使いこなす能力が必要になるのでは。
熊野:すべての機能を使いこなせなければならない訳ではない。
疋田:初心者とエキスパートで結果が変わらないか?
熊野:初心者とエキスパートではなく、辞書登録、パターン登録などのカスタマイズ機能の活用によって変わる。
クロスランゲージ WEB-Transer
玉井:30年やっている。昔は東芝、富士通、クロスランゲージで競争していたが、だんだん同じ機能に。今日はビジネスの話。まず、顧客ホームページの多言語化。インバウンドが増えて、ニーズが大きくなっている。200自治体、500社以上で使われている。都内の百貨店のほとんどが客。日、英、韓、中(簡体、繁体)が使える。毎日更新されていて人手では間に合わない。次に企業向け。情報漏洩の防止、社内用語の共有化、短納期が目的。輸出の多い自動車メーカーなど。英訳でPowerPointのレイアウトが壊れないようにする機能も人気。
渡邊:人が行うべき場所と機械が行うべき場所が違うということですね。
NTTデータ 機械翻訳サービス
松永:NTT研究所の成果である多言語統計機械翻訳エンジンを採用している。英日/中日/韓日翻訳に対応、2014年4月より商用利用されている。日英翻訳は2016年上期提供で計画中。数十万~数百万文対(ぶんつい)の対訳データを用いて翻訳モデル、言語モデルを生成して翻訳を行う。「主辞後置性」という日本語特性に基づいて語順を並べ替える技術により高精度な翻訳結果が得られる。今回は特許で1,200万文対、ITで900万文対を用いた(これまでお客様要望がないため一般文書向けはない)。ITマニュアル対象では数十万文対で実用になる評価結果を得ていて、対訳データの質に関する技術開発を進めている。
渡邊:翻訳対象をITマニュアルといった形で絞ることで、例えば40万文対程度で実用になり得るとのことです。