日本翻訳連盟(JTF)

「翻訳の日」連動企画 パネルディスカッション
災害時の多言語支援~多文化共生社会に向けた取り組み~

第2回:発災時の支援と事前準備の現状

9月30日の「翻訳の日」を記念して、2024年同日、災害時の多言語支援に焦点を当てたパネルディスカッションが公開されました。その模様を採録編集し、3回に分けてお届けします。今回は、年々増加する在日・訪日外国人に対して、実際の災害時にどのような支援が行われているのか、またどのような事前準備がされているのかについてご紹介いただきます。

◎パネリスト
一般財団法人自治体国際化協会(クレア)多文化共生部 多文化共生課課長 滝澤正和
ランゲージワン株式会社 執行役員 多文化共生推進ディレクター カブレホス・セサル
一般社団法人日本翻訳連盟理事/第 33 回 JTF 翻訳祭 2024 実行委員長/個人翻訳者 中野真紀

◎ファシリテーター
一般社団法人日本翻訳連盟会長(JTF)/株式会社翻訳センター 代表取締役社長 二宮俊一郎

第 1 回:多言語支援に関する団体の活動、翻訳・通訳者の意識

第 2 回:発災時の支援と事前準備の現状

第 3 回:多言語情報をどう届けるか

●増加する在留・訪日外国人

二宮:ここで、災害時の多言語支援の実務をご紹介いただく前に、前提として、今その支援の対象となる外国人は日本にどれくらいいるのか、数量的に把握しておくことは非常に大事だと思います。この辺を滝澤さんにまとめていただいておりますので、ご報告をお願いします。

滝澤:それでは、近年の在留外国人に関する状況についてお話します。

まず、「在留外国人数の推移」です。このグラフは、出入国在留管理庁が公表している資料になります。

令和5(2023)年度末における在留外国人の数は全国で341万992人。前年末と比べて33万5779人、10.9%増となっており、過去最高を更新しています。10年前の平成25(2013)年末には約206万人でしたから、10年間で130万人以上増えたことになります。

続いて、観光庁が公表している資料から「訪日外国人旅行者数の推移」を見ていきます。

棒グラフの水色が訪日外国人旅行者数です。こちらも年々増加傾向にあることが見て取れると思います。新型コロナウイルスの影響で2021年には約25万人にとどまるなど大きく数が減りましたけれども、2023年には2507万人の外国人旅行者が日本を訪れています。また、このグラフにはございませんが、日本政府観光局の発表では、今年(2024年)7月までの累計は2106万人で、同じ時期で過去最高であった2019年を上回り、過去最速で2000万人を突破したとのことです。

●在留外国人の多くがアジアから

次に、「在留外国人の構成比」です。

左側の円グラフで、令和5(2023)年度末の在留外国人数を国籍・地域別に見ますと、まず中国が約82万人で第1位、次にベトナムが56万人、続いて韓国が41万人で続き、その次がフィリピン、ブラジルとなっています。上位5カ国で全体の約7割を占めております。

続いて、右側の円グラフですけれども、在留資格別では、永住者が89万人で1位、全体の4分の1を占めています。次に技能実習が約40万人で2位、続いて技術・人文知識・国際業務が36万人、留学が34万人の順となっています。

最後に、「在留外国人数の分野別推移」を見ていきます。

左側のグラフは、在留外国人数の国籍別の上位5カ国の推移を示したグラフです。その中でも、近年、ベトナム国籍の方が大きく増加しているのが見て取れると思います。右側は、在留資格別の推移です。技能実習や特定技能などの方が増加傾向にあります。

以上、簡単ではございますが、在留外国人等の状況についてご説明をさせていただきました。

二宮:現在の状況を非常にわかりやすくまとめていただき、ありがとうございました。こうやって年次推移で表していただきますと、ベトナムの方がこんなに、しかも急激に増えているということを実感できるかと思います。

これだけ多くの方々が日本に旅行に来られたり、あるいは長年住んでいらっしゃるという状況において、災害が発生したらどうするのかと考えますと、当然ながら支援が必要になるということがあります。もう一つポイントは、非常に多様な国の方が来ていらっしゃる。必ずしも日本語、英語のどちらかわかるという方々ばかりではないというところが、今ご報告いただいた国別状況からもわかるところかと思います。

中野:そうですね。最初にこのテーマについて考えた時、私は在留外国人のことばかり頭にあったんですけれども、考えてみたら、今これだけ多くの外国人が観光で日本にいらしている。在留の方以上に日本の状況が全くわかっていない方が大勢いて、台風などですと事前に旅行の予定を変更することもできますが、地震のように突然起こるものだと、被害に遭う可能性がある。それを考えると、これからどうやって情報を伝えていくかという点が気になりました。

そして、通訳者、翻訳者は9割ぐらいが英語関係で、英語以外でもやはり欧州言語が多いのですが、アジア言語に対する需要も高まっている。翻訳通訳業界としてもアジア言語についての環境をもっと整えていきたいという点でも、本当に興味深い数字でした。

二宮:セサルさん、いかがですか。

セサル:私自身が在日外国人に当たるのですが、在日外国人は、いわゆる住民です。よって、日本人と在日外国人が同じような括りです。

先ほど中野さんがおっしゃった通り、訪日外国人が日本で旅行している間に災害に遭われたらどうするか。誰が情報発信するのか。そういった住み分けを、誰がどのように対応するか、どこへ駆けつければいいのかという情報提供が、今後の課題であるとも思っております。

二宮:おっしゃる通りで、たまたま日本にいらっしゃって、たまたま災害に遭いました、何の事前情報もないです、という方々も今後もたぶんいらっしゃる。それをどうフォローしていくかというのは大きな論点だと思います。

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