日本翻訳連盟(JTF)

私の一冊『腐敗の時代』

第50回:特許翻訳者 二神信也さん

『腐敗の時代』渡部昇一著、PHP文庫、1992年(単行本初版1975年)

『腐敗の時代』渡部昇一著、PHP文庫(第24回 日本エッセイスト・クラブ賞受賞(1976年))。

本業は英語学者だった渡部昇一氏のエッセイ集です。「英語教育考」では、「化学者としての成功と高校の成績との相関性は理科より外国語の方が高い」という面白い意見を紹介されてまして、大学時代も特許翻訳をするようになった今も私の拠り所となっています。

特許翻訳するのに技術の知識だけで読解力がなかったら、限定の要否(場所や形状、作成方法など)や原文の不備(不適切な限定や定義など)の判断などできませんしね。ただ、語学力だけでもダメで、例えば、クレームでは一見「何々が」の方が座りが良いし、文法的に「は」は間違いだと公に言い切る方もいてはりますが、特許庁のクレーム例では両方ありますし、実際「何々は」が多いのでは(化学バイオ系の企業は「が」の傾向)。「が」が正しいのではなく、「は」は正しい、ぐらいかと。

「『ガリヴァー旅行記』の著者スウィフトは絶えず英語に腹を立てていた。」という枕から社会について考察する「腐敗の効用」なども面白いと思います。絶版なので電子版でどうぞ。

◎執筆者プロフィール

二神 信也(ふたがみ しんや)
特許翻訳者
大阪の特許事務所勤務を経て、現在フリーランス(コロナ後一時期知財サービス会社、特許事務所で社会勉強)

★次回は、翻訳者のJim Rionさんに「私の一冊」を紹介していただきます。

←私の一冊『外国出願のための特許翻訳英文作成教本』

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