日本翻訳連盟(JTF)

私の一冊『Mouse or Rat: Translation As Negotiation』

第51回:翻訳者、ライター ライオン ジミーさん

『Mouse or Rat: Translation As Negotiation』Umberto Eco著、Weidenfeld & Nicolson; 1st edition (March 28, 2013)

翻訳という営業活動に対する考え方は二つに分けられると思います。まず、日常業務の中でどうやって目の前の依頼を納期までに且つ高品質に完成させられるか。これはいつも課題ですが、迷う時間がない場合が多いです。しかしその合間に文芸系の依頼に向き合っている時にはもっと大きな考え方もある。その時は深い疑問と向かい合う事もある。日本語を英訳する事は実際に可能か?翻訳の価値は何か?と。

『Mouse or Rat』の内容はその後者そのものです。著者 Umberto Eco氏はイタリア人作家・翻訳者・哲学者です。この一冊で、イタリア語と英語の違い等を例にし、翻訳の本質に疑義を持つという事です。非常に重く難しそうかもしれませんが、実は軽い気持ちで面白く言語のあらゆる問題を遊び心で取り上げる。Eco氏は自分の好きな作家のひとりです。この一冊を読んだら多くの共感を感じ、親近感を持ちました。是非、読んでみてください。

◎執筆者プロフィール

Jimmy Rion(ライオン ジミー)
山口県在中アメリカ人翻訳者とライター。著書の『Discovering Yamaguchi Sake』を2023年出版、横溝正史氏の『悪魔が来たりて、笛をふく』の英訳担当。訳文の『The Devil's Flute Murders』も同年刊行。雨穴氏の『変な絵』の英訳文『Strange Pictures』も2025年1月から発売中。TJ翻訳合同会社の英訳責任者として勤めています。「スコットランド人蔵人」アンドリュー・ラッセルと共に、ポッドキャスト「Sake Deep Dive」で日本酒の奥深い話を毎月発信しています。2025年5月9日~11日に福岡で開催されるIJET-33の実行委員会員。

★次回は、英訳者のJennifer O'Donnellさんに「私の一冊」を紹介していただきます。

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