私の一冊『Intermezzo』
第53回:ウクライナ語翻訳者 コマロウシカ・ヴィクトリヤさん

ウクライナの印象派作家、ミハイロ・コチュビンスキーが書いた『Intermezzo』。この本は、休むことの大切さを思い出させてくれる、私にとっての座右の書です。Intermezzoはイタリア語で「間奏曲」を意味する言葉です。数々の「しなければならない」ことに疲れた主人公は、一度都会から離れ、美しい自然に囲まれた田舎で過ごします。これが彼にとっての間奏曲となり、活動する力を取り戻すきっかけとなります。
ミハイロ・コチュビンスキーは、風景や感情の描写が得意で、気づかないうちに読者も主人公と一緒に癒されていきます。まさにセラピーのような作品です。
この小説は1908年に執筆されましたが、今の時代を生きる私たちにも通ずるものです。たくさんの「しなければならない」ことに追われ、休む暇もなく毎日走り続けている人は少なくありません。私も今まで走り続けてきた一人ですが、翻訳業務においては「休憩を挟む」「休む」ことは欠かせないと思います。これは、質の良い翻訳を提供し続けるための戦略であると日々実感しています。
◎執筆者プロフィール
Komarovska Viktoriia(コマロウシカ・ヴィクトリヤ)
ウクライナ語翻訳者。大学で日本語・日本文学、ウクライナ語・ウクライナ文学を専攻。大学卒業後、多言語サポート・社内翻訳に従事。その後、フリーランス翻訳者として幅広い分野の翻訳を手掛ける(福祉、医療、教育、言語学習、文化など)
★次回は翻訳者の池尻壽子さんに「私の一冊」を紹介していただきます。