日本翻訳連盟(JTF)

ISO規格の最新動向

ISO/TC 37/SC 5高松総会参加報告

2. 通訳部会(WG 2)と通訳機器(WG 3)の規格について

ここでは、「JTF内ISO検討委員会」通訳部会として、特に関係するISO規格について取り上げ、昨年から今年までのWG 2、WG 3で扱っている規格について、それぞれの特色や傾向について簡潔に報告させていただきます。また今年6月22日から28日まで開催されたISO/TC 37 高松総会について、関連したISOについても報告させていただきます。

2024年、2025年は、WG 2(Interpreting)、WG 3 (Facilities and equipment for interpreting services)は、共に過去に発行した規格の定期な見直しの時期と重なっていることが大きな特色になっています。

以下に、WG 2、WG 3ごとのそれぞれの規格内容と特色について報告させていただきます。

通訳 ISO/TC 37/SC 5/WG 2 Interpreting

ISO 18841:2018 Interpreting services- General requirements and recommendationsが現在進行中です。この規格は2018年に発行し、現在5年見直しの時期となり、見直しを進めているところです。会議通訳を含めた“通訳全般”に共通する条項の修正、追加等を議論しています。現在CDからDISに向けて、高松会議でも議論がされました。この議論を受けて今後DISの投票が予定され、最終的な発行時期を2026年8月頃に向けて進行しているところです。

通訳機器 ISO/TC 37/SC 5/WG 3 Facilities and equipment for interpreting services

現在、通訳機器については、4件のうち、2件がすでに発行済となっています。

ISO 17651-1:2024 Simultaneous interpreting — Interpreters’ working environment — Part 1: Requirements and recommendations for permanent booths

ISO 17651-2:2024 Simultaneous interpreting — Interpreters’ working environment — Part 2: Requirements and recommendations for mobile booths

上記の17651-1「固定式通訳ブース」と17651-2「移動式通訳ブース」はそれぞれISO規格として既に昨年発行しています。

以下の規格2点については、これから各段階に進んでいく予定です

ISO/FDIS 17651-3 Simultaneous interpreting — Interpreters’ working environment — Part 3: Requirements and recommendations for interpreting hubs

ISO17651-3「通訳ハブ」については、最終段階のFDISへ進むべく現在、各国での投票が始まっているところです。この段階をクリアできると、遅くとも来年初頃にISO規格として発行予定です。

ISO/CD 17651-4 Simultaneous interpreting — Interpreters’ working environment — Part 4: Requirements and recommendations for signed language interpreting

ISO/CD 17651-4(手話通訳) については、高松会議においても、関係者の間で議論しました。この会議には、海外から参加された方の中に聴覚障害のある方が参加されていたため、議論の進め方にも工夫がこらされていました。

聴覚障害者や手話通訳者、会議通訳者、機材関係者との対面方式での議論やリモートでの議論の際に、手話通訳者が、画面越しに議論の内容を手話による通訳を、聴覚障害者向けにすると同時に、聴覚障害者が発言する内容を、健常者向けに、音声による通訳をする必要があります。よって、手話通訳者は、最低でも2名以上必要となります(1名は手話による通訳:聴覚障害者向け。もう1名は、健常者向け、音声による通訳)

WG3 の会議の様子

日本では、こういった聴覚障害者と手話通訳者、会議通訳者が一緒になって議論し、その内容を、別の手話通訳者が音声にして参加者に伝えるという場面を経験することは、稀有に近いと思いますが、欧米では、日本に比べて、比較的多いようです。

というのも参加者の中には、カナダから大学で“手話を含めたコミュニケーション論”を学生に教えている方も参加していましたし、この会議を運営する事務局の方も事前準備や進行途中で、画面越しで手話を交えて、コミュニケーションをとっていました。

この規格の各条項の中には、“手話通訳(Signed language interpreting) に関する条項が多く、かつ詳細な内容となるため、通常の会議とは違う方法で慎重に進めていく必要があることにも気づかされました。

現在、この規格は、CDの段階からDISに進む段階ですが、かなり時間を要する規格となりそうです。

以上の上記2点 ISO /FDIS 17651-3「通訳ハブ」、ISO/CD17651-4(手話通訳)が現在進行中のWG 3の状況です。

なお、上記の進行中の規格以外にも、定期的な見直しを進めているISO規格もございますが、「JTF内ISO検討委員会」としては、対象としているものではないため、この場では割愛させていただいています。ご了承願います。

報告者
株式会社コングレ・グローバルコミュニケーションズ
代表取締役社長
村下 義男

日本翻訳連盟常務理事。2010年より(株)コングレの通訳部・翻訳部門責任者。その後2013年より、(株)コングレ・グローバルコミュニケーションズに出向。2017年7月より現職。2015年よりJTFのISO検討委員会・通訳部会委員として参加。
TC 37 SC 5 国内委員

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