日本翻訳連盟(JTF)

2022年度第1回関西セミナー報告

日 時:2022年6月28日 (火)
開 催:zoomウェビナー
テーマ:持続可能な「翻訳教育」のために:機械翻訳の外国語教育(MTILT= Machine Translation in Language Teaching)の提案
講演者:山田 優 立教大学 異文化コミュニケーション学部・研究科教授

<登壇者のプロフィール>
立教大学 異文化コミュニケーション学部/研究科 教授
東京都出身。米国ウエストバージニア大学大学院修士(言語学)。立教大学大学院異文化コミュニケーション研究科 博士(異文化コミュニケーション学/翻訳通訳学)。フォードモーター社内通訳者、産業翻訳者を経て、株式会社 翻訳ラボを設立。今は、翻訳通訳研究に没頭中。研究の関心は、通訳翻訳研究全般、訳出プロセス、翻訳テクノロジー論(機械翻訳、ポストエディット含む)、メディア翻訳、TILT(翻訳の外国語教育への応用)。 日本通訳翻訳学会理事歴任。八楽株式会社 チーフ・エバンジェリスト。一般社団法人アジア太平洋機械翻訳協会(AAMT)理事。

参加者数:86人

概 要
優秀な翻訳者が必要である。そのために『翻訳教育』が重要だ。しかし、日本の翻訳教育体制は整備されていない。他方で、伝統的に民間スクール等がそれを担ってきたが、これらは個人のノウハウを排他的に伝承するもので、「翻訳知」の民主化には前向きでない。これとは別に一般的には、翻訳スキルは、外国語能力とは異なるものと考えられてきた。そのため翻訳教育と翻訳者予備軍を育てる外国語教育が、お互いに歩み寄る機会も少なかった。
しかし、近年の機械翻訳(MT)の発展により、翻訳スキルと外国語能力に求められる最低限スキルが、MT品質を超えるもの(あるいはMTとは異なるもの)として認識され始めた。かくして、両教育は共通の目標を見出した。すなわち、MTを使った翻訳/外国語教育が有意義となる。
本発表は、この文脈で『翻訳教育』を再考する。具体的に、機械翻訳の外国語教育への応用(MTILT)を提案する。

<講演のポイント>

  • 機械翻訳の外国語教育への応用(MTILT)を理解できる
  • 翻訳業界の未来の鍵となる翻訳者養成のヒントを得られる
  • 機械翻訳を使った外国語学習の活用方法を学べる
  • 翻訳能力と外国語能力の違いと共通点の理解を深められる
  • ポストエディット能力・教育への示唆を得られる
  • 翻訳者がMTと日常的にどう向き合うべきか?この問いに関する回答を得られる

<参加者のアンケートより>

  • 各テーマごとに、課題文のリライトを行ったので、テーマの理解が進んだ。リライトの際の講師のコメント語彙複雑性、統語複雑性という指標は知らなかったので勉強になりました。
  • 外国語学習にMTを使うという観点からのお話が非常に興味深かったです。私自身、自分で訳した後にMTにかけてみて他の表現を調べてみるということがあります。翻訳者、翻訳会社としてまだまだやることが沢山ある、と最後におっしゃった山田先生のお言葉が心に残りました。
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