日本翻訳連盟(JTF)

第7回「翻訳・通訳業界調査」 クロス集計等の手法を用いた分析結果報告〈個人の部〉

JTF業界調査委員会

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2 景況感の変化とコロナ禍の影響

●通訳者の景況感が大きく改善

ここまでの翻訳者・通訳者のバックグラウンドを踏まえた上で、景況感の変化とコロナ禍の影響についての分析結果を説明する。まず収入増減を前回の調査と比較した結果、そしてコロナ禍による仕事の増減を比較した結果について述べる。

翻訳収入増減を2020年と2022年とで比較したのが図10である。青い棒グラフが前回2020年の調査結果、オレンジの棒グラフが2022年の結果である。統計解析を行った結果(カイ二乗検定)、20年と22年のグラフ分布全体に差がないことが示された(p=0.19)。

この結果から、前回の調査と比較して、景況感が大きく変化していない可能性があると言える。(しかし、残差分析では「減った(20%以上)」項目に残差ありの結果が出たため、前回と比べて20%以上収入が減った翻訳者は、ある程度減少している可能性がある。)

図11は、通訳収入の増減について前回(2020年)の調査と比較した棒グラフを示す。目視ではっきり判別できるほど前回(2020年)と今回(2022年)で大きく差が出ていることがわかるが、統計解析(Fisherの正確確率検定)でも差が示された(p<0.05)。

残差分析の結果では、「20%以上増えた」「10~20%未満増えた」の2項目が増加しており、項目「20%以上減った」が大きく減少していることが示された。そのため、前回の調査と比較して、景況感が大きく改善していると言っても差し支えない結果となっている。

●コロナ禍の影響は緩和傾向

図12は、コロナ禍による翻訳の仕事の増減について前回(2020年)の調査と比較した結果を示す。

統計解析の結果(カイ二乗検定)、前回(2020年)と今回(2022年)の棒グラフの分布に差があることが示された(p<0.05)。残差分析の結果、すべての項目で残差があることが示された。

(項目「どちらともいえない」が大きく増えている一方で、3項目の「増えた」〈「増えた(10~20%未満)」、「増えた(20~40%未満)」、「増えた(40%以上)」〉も増加しており、3項目「減った」〈「減った(10~20%未満)」、「減った(20~40%未満)」、「減った(40%以上)」〉も大きな減少が示されていることから、コロナ禍の影響が前回〈2020年〉と比較して緩和されていることが示唆される。)

図13は、コロナ禍による通訳の仕事の増減を、前回調査と比較した結果である。

先ほどの景況感と同じように、前回と大きく結果が変わっていることが目視で明らかである。

統計解析を行った結果(Fisherの正確確率検定)、前回(2020年)と今回(2022年)の棒グラフの分布に差があることが示された(p<0.05)。また、残差分析の結果、「増えた」3つの項目に大きく差があること、項目「40%以上減った」に残差が強く出ていることが示されていることから、前回調査と比較してコロナ禍の影響が大きく緩和されていることが示唆される。

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