第7回「翻訳・通訳業界調査」 クロス集計等の手法を用いた分析結果報告〈個人の部〉
JTF業界調査委員会
3 機械翻訳(MT)/ポストエディットの状況、「インボイス制度」への対応
●PEの打診・依頼が増加傾向
機械翻訳(MT)、ポストエディット(PE)の状況について述べる。
機械翻訳エンジンの調査については、前回(2020年)は翻訳支援ツールと同じ回答枠に設問が設定されていたが、今回(2022年)の調査から法人の調査と同様の設問形式として、機械翻訳エンジンと翻訳支援ツールの設問を分けた。
その結果、図14のとおり、最も使用されている機械翻訳エンジンとしての回答はDeepL、その次にGoogle Translationとなった。一方で、5割超が「機械翻訳を使用していない」と回答した。
ポストエディットの打診・依頼の状況について、前回調査との比較を行った結果を示す(図15)。
統計解析を行った結果(カイ二乗検定)、前回(2020年=青色)と今回(2022年=オレンジ色)のグラフ分布に差があることが示された(p<0.05)。残差分析の結果、項目「PE業務を請けているが、PEの依頼の数に差はない」の増加、項目「PEの打診および依頼はない」の減少が示された。また、項目「PE業務を請けており、PEの依頼が増えた」も残差に近い値が出たことから、PEの打診、依頼が増加している可能性があるかもしれない。
●PE料金は翻訳料金の約6~7割
図16は、翻訳会社向けの英日ポストエディット料金を原文基準で見た棒グラフである。昨年度から新たに調査した内容になるため、単年の結果である。英日のPE料金は、「原文1ワード5~7円未満」が最も大きい割合として示された。
これは新たな質問項目であるため、次回調査で変化の有無を見ていきたい。
この英日PE料金と翻訳料金の比較を行った結果が、図17である(青色の棒グラフがポストエディター、オレンジが翻訳者の料金)。
PE料金「原文1ワード5~7円未満」は、翻訳料金で最も多い「9~11円未満」の約6割程度の数値となっている。
次に、日英PE料金を原文基準で見た棒グラフを示す(図18)。
最も大きい割合のレートが、「原文1文字5円未満」を示しているが、このグラフは山の頂上が不明であるため、次回調査でさらに項目を設定する必要があるかもしれない。
図19は、日英PE料金を翻訳料金と比較した棒グラフである。PE料金の一番大きな割合を占めた項目は、「原文1文字5円未満」で、翻訳料金で最も多い「5~7円未満」の約7割前後ではあるものの、PE料金の山の頂上が不明であるため、7割前後「以下」である可能性もあることを付記しておく。
●インボイス制度理解度と適格事業者転換に関連性
インボイス制度への対応について、理解度と適格事業者への転換との関連を示す。
図20はインボイス制度への理解度と適格事業者への転換との関連について、統計解析を行い(Fisherの正確確率検定)、残差分析を行った結果である)。
その結果、図20に示したように、「十分に理解できている」と回答した方は、「既に適格事業者である」である傾向があり、「概ね理解できている」と回答した方は、「制度導入に合わせて適格事業者へ転換する」傾向があり、「あまり理解できていない」「理解できていない」と回答した方は、「対応方針をまだ決めていない」傾向があることが明らかとなった。
●〈個人の部〉まとめ
景況感の変化とコロナ禍の影響について、翻訳者の景況感に大きな変化は認められなかった。通訳者の景況感は大きく改善されていた。
通訳者・翻訳者ともに、コロナ禍の影響は緩和されていた。
MT、ポストエディットの状況について、PEの打診依頼が増加している可能性がある。
PE料金について、最も割合の高いPE料金は、原文基準で英日1ワード5~7円未満、日英1文字5円未満であることが示された。
インボイスへの対応について、理解度が高いと既に適格事業者である、または適格事業者へ転換する傾向が高いことがデータから示された。
1 個人翻訳者・通訳者の概要
2 景況感の変化とコロナ禍の影響
3 機械翻訳(MT)/ポストエディットの状況、「インボイス制度」への対応