2-3 次なる時代を見据えたマニュアル制作会社の新たなる戦略~紙から新しいメディアの移行に必要な手法と考え方とは~
パネリスト:
阿部 泰之
株式会社石田大成社 常務取締役 翻訳事業部・事業部長 海外事業本部・本部長
山口 龍
株式会社石田大成社 翻訳事業部 企画戦略課 課長
浅田 潤
YAMAGATA INTECH株式会社 専務取締役
野本 英男
YAMAGATA INTECH株式会社 新規事業部門 ソリューション部 部長
モデレーター:
徳田 直樹
一般財団法人テクニカルコミュニケーター協会 副評議員長
株式会社パセイジ 顧問
報告者●山根信成(トランスパーフェクト・ジャパン合同会社)
- 本セッションのテーマを一言で言うと、「メディア(情報発信媒体)の急速な多様化にいかに対応してゆくか?」に尽きると考える。
ディスカションは石田大成社、YAMAGATA INTECH各社の紹介から始まり、事例として石田大成社の「カーナビゲーションのディスプレイ翻訳」、そしてYAMAGATA INTECHは「コンテンツに関するワークフローの変化(三段階)――ESシステム」を紹介しながらモデレーターの徳田直樹氏の進行で行われた。 - 石田大成社 1916年創業。印刷会社からマニュアルライティング・翻訳・DTPと事業拡大し、従業員1300人で200億円を売り上げている。海外の8拠点にて多言語案件に注力している。多言語に関してEUでは自動翻訳の活用も進んでおり、同社の扱い言語は50以上になっている。
- YAMAGATA INTECH YAMAGATAグループも1906年創業の印刷会社からスタート。INTECHは使用説明書に特化し、現在300名体制で工作機械、携帯、カーナビ、複合機、自動車、FA、モーター等、多岐にわたる使用説明書を手がけている。
石田大成社:
カーナビゲーションのディスプレイ(UI)翻訳について
概要
- 自動車メーカーより発注。カーナビゲーションメーカー数社が受注して石田大成社に発注される。対応言語は37言語(言語ペアは43になる)。
- 実務について:ナビ画面枠の限界により文字幅の制限がある。
- 翻訳用のファイルでは画面の推移が把握できないのと、画面が切り替わる際の文言のつながりが把握しにくい場合がある。
- エンドユーザー向けなので専門用語は避けることが必須になる。
基本実務フローと説明
- 英文チェック:各オーディオ/ナビゲーションメーカー統一、英文DBでの文言管理
- .翻訳作業:XML変換、Tradosを使用して翻訳
- 短縮作業:Winモニターで実機での描画処理を模倣し、各サイズ計測・フォント定義に基づき描画した画像の幅サイズの計測をおこなう。
- 評価作業:画面と翻訳文のマッチング確認、ユーザーが理解しやすい表現か確認。
各国のネイティブが専用システム(Navi Support System)にて画面評価し、修正は翻訳者が行う。
課題
デジタルコンテンツ増加によるUI翻訳の要件は増えるので、開発初期段階からローカライズを想定したシステムの中での知識・機能開発を進めてゆく必要が重要になるだろう。
YAMAGATA INTECH: ESシステム
(以下、YAMAGATAとする)
概要
- マーケットの変化の中で、①少量多品種・グローバル製品の増加 ②翻訳・制作コスト低減の必要性 ③電子マニュアル対応 が要求されてきた。
- YAMAGATAではXMLを用いた「制作支援システム」を開発し、2007年から実運用を始めている。
- ESシステムと呼ばれる取扱説明書素材管理システムは、テクニカルライターが使用するXMLベースの取説CMSであり、編集、パブリッシング、翻訳を支援する。
このコンセプトの核として、文章をモジュール化する、つまり既存取説を流用して新しい取説を制作する作業が行われる。
- 簡潔に述べると、⇒文章をモジュール分解 ⇒機種間での共有/流用を行なう ⇒翻訳を連動させる、という段階を踏む。
- ここで重要なのは機種と各モジュールの使用状況をマトリックス表示できるエディタの存在である。
ES システム導入による成果
- ライティング
機種間で表現を統一できる。機種共通のコンテンツは1回の修正ですべての機種に反映可能となる。 - 翻訳・編集
英語修正が生じた場合、XMLの出し入れで機械的に実行できる。
機種間の翻訳表現を統一できる。
定訳語、不訳語は変数設定によりリスト管理し、迅速な更新が可能。
結果として誤記・修正ミスが削減され、修正のリードタイムも縮小した。全体の工数を
大きく低減させる成果があった。
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