日本翻訳連盟(JTF)

「翻訳の日」連動企画 パネルディスカッション
災害時の多言語支援~多文化共生社会に向けた取り組み~

第2回:発災時の支援と事前準備の現状

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●災害時の多言語支援ツールの事前準備

二宮:翻訳では、事前準備のほうが活躍のシーンは多いかと思いますが、この事前準備を非常に丁寧に細かくやっていらっしゃるのがCLAIRさんです。具体的にどのような事前準備やツールを用意されているのか、一部ではございますけれども滝澤さんからご紹介いただきます。

滝澤:それでは、災害時における外国人支援の取り組みの中から、当協会が作成している災害時に活用できる多言語支援ツールについて、いくつかご紹介をさせていただきます。

下図は、「防災・減災のための多言語支援の手引き2023」というマニュアルです。

主に自治体や国際交流協会の職員など、支援者の方に活用していただいています。内容は、平時においてどのように災害に備えたらよいかとか、災害発生時における取り組み、多言語での情報発信や相談対応などの拠点として、先ほど災害多言語支援センターをご紹介しましたが、その設置や運営について解説した手引きになっています。

下図のような「在住外国人向け防災行動計画(マイ・タイムライン)検討ツール」の多言語も作成しています。

これは、台風などの水害に備えるためのハザードマップの確認や避難先のチェックを通じて防災行動をあらかじめ整理し、実際に災害が起きた際に命を守る避難行動に役立てていただくためのツールです。もともと国土交通省が日本語で作成したものですが、やさしい日本語を含む14言語対応版を当協会が作成し、ホームページで公開しています。また、広く活用していただくために、ツールの活用に関する動画も作成し、こちらもホームページで公表しています。

下図は、「災害時多言語表示シート」です。

これは、災害時に使用する文例を多言語で表示して、あらかじめ公開しているものです。災害時に避難所や外国人の方が集まる施設で掲示することを想定しています。避難所などでよく使われる396の文例があり、こちらもやさしい日本語を含む14言語に対応しています。

下図は、左側が災害時の外国人支援用のピクトグラムと食材に関するピクトグラム、右側が多言語指さしボードです。

こちらも避難所等の施設で使うことを想定しています。食材に関するピクトグラムについては、例えば避難所に避難された方で日本語が苦手な方などが、絵文字を通じて食べられない食材などを伝えることを想定しています。

多言語指さしボードも、外国人の方と最低限の指さしで簡単なコミュニケーションができるように作成したツールです。

下図は、多言語災害情報文例集です。

災害時に多言語で実際に配信された支援情報の中から抽出し、それを一般化した文例集になっています。災害発生時におけるさまざまな情報発信や避難の呼びかけのために活用していただくことを想定しています。

例えば、時刻や場所などの名前を文例に加えることでカスタマイズして使用できるようになっています。災害の基礎知識や水害に関する情報、補償金や見舞金、健康管理などさまざまな分野で63の文例があります。対応言語数は10言語となっていますが、今後拡充も予定しています。

最後になりますが、平常時から外国人住民向けに防災減災の取り組みを行っている自治体もありますので、その例を少し紹介します。

図の左側は愛知県です。避難所へのスムーズな外国人の受け入れのために、防災訓練や実際の避難所運営の際に活用できる「多文化防災ガイド」を作成しています。また、図右側の静岡県では、外国人が安心して避難生活を送れるように、「外国人住民のための避難生活ガイドブック」というものを作成しています。こちらは当協会CLAIRの取り組みではありませんが、せっかくの機会ですので参考にご紹介させていただきました。

二宮:ありがとうございました。事前に自治体と組んでいろいろな取り組みをされ、普段我々の目に触れるところ、触れないところを併せてご紹介いただいたかと思います。

(第3回につづく)

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< 第1回:多言語支援に関する団体の活動、翻訳・通訳者の意識

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