TCシンポジウム2012【京都開催】参加レポート

TCシンポジウム2012【京都開催】参加レポート

柳 英夫
アクロリンクス株式会社

 



名称●テクニカルコミュニケーションシンポジウム2012【京都開催】
期間●2012年10月4日(木)、5日(金)
場所●京都リサーチパーク
主催●一般財団法人テクニカルコミュニケーター協会
詳細●http://www.jtca.org/symposium/index.html

報告者●柳 英夫(アクロリンクス株式会社)

 


TCシンポジウム、テクニカルコミュニケーター協会、tcworld Japan 

日本の「トリセツ」業界最大のイベント、TCシンポジウム、その京都開催に参加してきた。2012年の京都開催は、プレイベントも含めて、10/3 (水)、10/4 (木)、10/5 (金) の3日間。関西方面のみならず、韓国、中国からの来場者も目立ち、国際色が感じられるシンポジウムとなった。
 
TCシンポジウムを主催するテクニカルコミュニケーター協会は、製品等の取扱説明書(トリセツ)を扱う専門家の業界団体。メーカー企業のほか、トリセツ制作をプロフェッショナルとして受託する「制作会社」も会員企業として活動している。
 
やはり製造業が盛んなドイツでは、同様の業界団体としてtekomがあり、tekomが主催するイベント、tcworldは毎年世界中から多数の来場者を集めている。2012年のTCシンポジウム京都開催では、このtcworld Japanが併設となり、アクロリンクスはtcworld Japanのブース出展社として参加してきた。
 
「ユーザーエクスペリエンスとは ~ユーザーの想像を超えた感動価値の想像~」と題された基調パネルディスカッションのほか、業界のトレンドや課題について議論する各種パネルディスカッション、プレゼンテーションがあり、業界の最新動向を一度に獲得できる貴重な機会として、みなさん熱心に思い思いのセッションに参加されていた。セッションのテーマは大きく分けると、「事例紹介」「ツール案内」「技術動向」「海外トリセツ事情」があった。
 
自分自身は、出展したブースの番をしていたため、セッションに参加ができなかったが、多くの方にブースに立ち寄っていただき、営業的な成果のみならず、さまざまな情報交換もできた。特に、海外含むパートナー企業と交流ができたのは大きな収穫だった。

国際色を徐々に増してきたTCシンポジウム

まず、tcworld併設ということもあり、「トリセツ」制作を支援するツール、サービスの出展は、海外からの企業が多かった。イタリアの翻訳会社、オーストリアの翻訳支援システムの出展などは、tcworld併設だからこそだろう。
 
来場者の中では、韓国、中国からの参加者が目立った。この傾向は今後も続くものと思われる。当社のシステム、Acrolinxの紹介セッションでも、韓国、中国からの参加者もあり、通訳を交えてのプレゼンテーションとなった。韓国、中国は、日本のトリセツ業界を観察している。アジア圏の共通の課題もある。
 
「トリセツ」の制作といえば、まずは日本市場向けの日本語のトリセツが注目される。と同時に、日本のメーカー企業は世界中で製品を展開している。当然、英語のトリセツも制作しなければならないし、一般消費者向けの製品では、トリセツが英語から10ヶ国語に展開されることも珍しくない。自ずと、TCシンポジウムで取り上げられるテーマも、翻訳に関連するものが多くなる。
 
プレイベントでは、「解説:中国国家標準GB最新動向」というセッションがあった。中国市場の急速な市場の成長のためだろう。日本のトリセツ業界でも、中国市場向けのトリセツをどのように制作し、展開するべきか、というトピックは近年注目されているようだ。

制作会社と翻訳会社、トリセツ業界とホンヤク業界

制作会社と翻訳会社。制作会社の多くは、英語版のトリセツの制作(翻訳)も扱い、またヨーロッパに欧州言語多言語展開のための拠点を持ち、日本メーカー企業向けのMLVとしての顔もある。トリセツ業界とホンヤク業界、どちらも「翻訳」をする。しかし、「翻訳」の捉え方が違う気がする。
 
翻訳会社は、「翻訳」を「翻訳」の範囲で考え、制作会社は、製品の仕向地用のトリセツを制作する一工程として「翻訳」を捉えている。トリセツ業界の視点から言えば、たとえば中国語といった場合、中国市場に投入するトリセツの最終形を出力するところまでが語られる。中国語に翻訳した後、中国市場に投入するために必要な編集についても語られる。中国語のフォント事情について語られることもある。さらに、制作会社は、ソースとなる日本語コンテンツを制作し、同時に翻訳も請け負う。翻訳会社はソースとなるコンテンツに対して受動的だ。
 
自分自身が以前は翻訳会社の中で仕事をしていたから感じるのだが、翻訳業界の中にいると、ソースコンテンツの制作について知る機会が少ない。逆に、トリセツの制作現場では、その後工程となる翻訳に対して理解が低い。トリセツ業界とホンヤク業界、業界レベルのみならず、それぞれの現場レベルでも、もっと情報の行き来ができないものか、そんなことを感じた。
 
翻訳の仕事をしていると、「原文がひどい」という声をよく耳にする。自分自身でそれを口にだすこともある。しかし、原文の制作現場の事情に対しては理解がない。制作現場も翻訳工程の悩みを知らない。ホンヤク業界からも、「よい原文」が作られるために、現実的な提案ができないものだろうか。多言語展開しやすいマニュアルとはどのようなものか。これはホンヤク業界から提案できることが多いだろう。
 
トリセツの世界では、アジア圏共通の課題も多い。たとえば、中国、韓国、日本、いずれのメーカー企業も、英語版トリセツの言語品質について大きな課題意識を持っている。どのようなプロセスをもって品質課題を解決していくことができるか、アジア圏の関係者で議論できることも多いだろうし、ホンヤク業界ができる貢献も数多くあるだろう。
 
今年のTCシンポジウムでも国内外の業界関係者からさまざまな刺激を受け、このようなことを考えるきっかけとなった。これもひとつの収穫だったと言える。

最後に、せっかくの京都だったので

金曜日の夕方にシンポジウムは大盛況のうちに終了。慌ただしくブースを片づけ、お世話になったみなさんに挨拶をした後は、夜の祇園を散策。土曜日もそのまま京都に滞在。伏見稲荷大社、三十三間堂、清水寺、祇園を巡ってきた。海外からの来場者の方々も、それぞれに京都を満喫されたようだった。
 
京都という場所だからこそ、日本と世界を強く感じられるシンポジウムになったのかもしれない。TCシンポジウム / tcworld Japanの京都開催を実現してくださったテクニカルコミュニケーター協会とtekomの関係者の皆様にこの場をお借りして御礼申し上げます。


 

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