日本翻訳連盟(JTF)

MTソリューションセッション 講演5 「Transit NXT製品紹介~機械翻訳へのアプローチ~」

2014年度第3回JTF関西セミナー報告 
MTソリューションセッション 講演5
「Transit NXT製品紹介~機械翻訳へのアプローチ~」

目次 由美子(めつぎ ゆみこ)

サンフランシスコ州立大学卒。
1998年にシュタール ジャパンに入社し国産自動車メーカーの取扱説明書の欧州言語版作成、整備関連テキストの16言語翻訳などの多言語翻訳プロジェクトに取り組む。自社開発の翻訳支援ツールTransitの社内外ユーザーサポート業務も担当。2002年にはSTAR Paris(フランス)に1年間滞在し、現地担当者と共に多言語翻訳プロジェクトを推進。STAR AG本社(スイス)へも赴きシュタール製品の理解を深めるだけでなく、各オフィスの担当者とも交流を温める。現在は「Transitスペシャリスト」として最新版Transit NXTを国内で幅広く紹介している。

 



2014年度第3回JTF関西セミナー
日時●2015年1月30日(金)10:30~17:00
開催場所●大阪大学中之島センター
テーマ●機械翻訳と向き合うときが来た― MTをもっと身近に、現実的に考える ― MTソリューションセッション 講演5 「Transit NXT製品紹介~機械翻訳へのアプローチ~」
講演者●目次 由美子(Metsugi Yumiko)株式会社シュタール ジャパン Transitスペシャリスト
報告者●山田 由加里(株式会社川村インターナショナル)


 
高品質の翻訳と、翻訳事業のスキルとノウハウを活用した最先端のテクノロジー両方を提供する世界唯一のソリューションプロバイダーであるシュタールグループ。そのスイス本社とドイツの専任チームが開発を行い、シュタール ジャパンにて日本語化し販売とサポートを行う「翻訳支援ツールTransit NXT」は、機械翻訳(MT)機能とのインターフェースを有し、セグメントを翻訳する際にリクエスト操作により訳例「MTマッチ」を提示させることが可能。翻訳メモリからの訳例「ファジーマッチ」も同時に提示できる。MTマッチはそのままでも一部を変更しても訳文として取り込むことができ、セグメントにはMTを利用して翻訳したことが記録される。また、MTマッチを利用したセグメントのみを抽出して表示させ、重点的にチェックすることも可能である。

Transit NXTには「訳例抽出ファイル」を作成する機能があり、新規文書に対してたとえば70%以上の類似率を持つファジーマッチ訳例のみを翻訳メモリの中から抽出することができる。翻訳パッケージには翻訳メモリすべてではなくプロジェクトに有用なファジーマッチ訳例のみが含まれる訳例抽出ファイルを翻訳者に渡すことで効率的な翻訳作業環境の展開を実現している。

2013年にリリースされたTransit NXTのサービスパック(SP)7ではMTとのインターフェースを搭載し、2014年には自社開発による統計的機械翻訳エンジンであるSTAR Moses(シュタール モーゼ)との連携が実現した。翻訳者、ポストエディター、チェッカー、プロジェクトマネージャー、翻訳フローや多言語の文書サプライチェーンにMTソリューションを統合させたい企業にとって安全で経済的なオプションを提供している。
Transit NXTではMTエンジンの種類によってMTを利用する次の2つのシナリオを明確に区別している。

  1. 「エディターMT」では不特定ユーザー向けのオンラインMTシステムが利用可能。現時点ではGoogle TranslateとiTransilate4.euに対応しており、近くリリースされるSP8ではMy MemoryとMicrosoft Translatorに対応する。

  2. 「インポートMT」(有償オプション)では顧客専用のMTシステムを利用してTransit NXTでのインポート実行時にのみMTマッチを生成することができる。SYSTRANとSmartMATEに対応しており、SP8ではAsia OnlineとSTAR Mosesにも対応する。


    インポートMTではMTマッチにペナルティを与えることにより、前述の「訳例抽出ファイル」に類似する「MT訳例抽出ファイル」を生成することも可能。訳文にMTマッチが既訳としてあてられるのではなく、ファジーマッチウィンドウに表示されるMTマッチを翻訳者(またはポストエディター)が確認、編集して訳文として取り込むことができる。
     


 


MTの利用に際してはプロジェクトマネージャーがMTエンジンと併用すべき翻訳メモリや用語集を適正に選択し、訳例抽出ファイルを作成するなど翻訳作業がしやすい環境を整えることが望ましい。日本語がターゲット言語の場合に限らず、MTシステムから高品質の訳例を取得するためには高品質のコーパスと用語集でMTエンジンを十分に学習させ、それを実現するための担当者、エンジニアや言語学者などの投資が必要である。
 

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