日本翻訳連盟(JTF)

スタイルガイド入門

2015年度第1回JTFスタイルガイドセミナー報告
スタイルガイド入門

 

高橋 聡

英日フリーランス翻訳者。学習塾講師と翻訳業の兼業時代から、ローカリゼーション系翻訳会社勤務の時代を経て2007年にフリーランスとして独立。ITを中心にテクニカル翻訳全般を手がける。翻訳学校の講師業にも従事し、各種セミナーにも積極的に登壇。JTFではスタイルガイド検討委員と、ジャーナル編集委員を務めている。
http://baldhatter.txt-nifty.com/

 



2015年度 第1回JTFスタイルガイドセミナー報告
日時●2015年4月13日(月)10時30分~13時
開催場所●剛堂会館
テーマ●スタイルガイド入門
登壇者●高橋 聡 Takahashi  Akira(フリーランス翻訳者)
報告者●高屋敷 ゆかり(翻訳者)

 



 4回の連続講座の第1回として、JTF日本語標準スタイルガイド検討委員である高橋聡氏が、スタイルガイドの基本を説明した。

スタイルガイドとは

 Wikipediaによれば、スタイルガイド(スタイルマニュアル)は「出版物などにおいて統一した言葉使いを規定する手引き。主に出版社や学術雑誌などで用いられる」とのことだが、このセミナーで扱うのは「翻訳仕様書」、特に英日翻訳に使用するものである。主に表記について規定する。分野によってはまったく馴染みのない翻訳者もいるので、今回は、スタイルガイドを知らない人に向けて話す。

スタイルガイドが必要な理由

作業

 複数人での翻訳における表記を統一させるために必要である。文書量が多く、分担作業になるIT翻訳では、スタイルガイドの使用が多い。後で統一するよりも、先に規定しておくほうが効率的である。

コンテンツ

 表記が違うことによって意味が違ってしまうこともある、表記の違いもトータルして「完成度」とみなされる、などが挙げられる。表記が統一された文章は、文章自体、ひいてはその文章を使用する会社の「品位」を上げることにもつながる。

翻訳会社

 翻訳品質のひとつの目安になる、社内工程を整理しやすい、社内工程が効率的になる、などが挙げられる。スタイルガイドがないクライアントには提案できる。その際に汎用のスタイルガイドがあると便利で、『JTF日本語標準スタイルガイド』をそのために活用してもらいたい。
 

スタイルガイドの構成要素と、その最低限の指定

 スタイルガイドに規定する要素を列挙する。
 
1. 文体
2. 句読点
3. 記号
4. 漢字の使用制限
5. 漢字とひらがな
6. 送りがな
7. カタカナの長音
8. カタカナの複合語
9. 全角と半角
10. スペース
11. 数字と単位
 
指定の例については、文字数の都合上ここでは省略するので、JTF 日本語標準スタイルガイドの 12 の基本ルール(http://www.jtf.jp/jp/style_guide/pdf/jtf_style_guide_rule12.pdf)を参照されたい。

効率的な使い方を考える

 ツールでチェックを行うことで、表記チェックの負担を軽減して翻訳に集中することができる。スタイルをチェックするツールには、JTF日本語スタイルチェッカー、Wordマクロ「蛍光と対策」、WildLight、Trados StudioのQ&A Checkerなどがある。
JTF標準スタイルガイド12のルールのように、項目別に整理して把握する。複数社からスタイルガイドを提供されている場合は、自分なりのスタイルガイドテンプレートを用意しておいて同じ形式で整理すると、参照しやすい。

まとめ

 スタイルガイドは、拘束要素ではなく、効率化のカギとして活用できるものであるが、効率的に活用するためには自分なりに整理したりツールを活用したりする必要がある。
 


 

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