エラーカテゴリーに基づく翻訳学習者の学習過程における習熟度の分析

エラーカテゴリーに基づく翻訳学習者の学習過程における習熟度の分析(2日目c-5)


発表者:山本真佑花(神戸女学院大学大学院 博士前期課程2年)、田辺希久子(神戸女学院大学)、藤田篤(情報通信研究機構)

エラーカテゴリーの紹介

2006年、MeLLANGEのエラータイプが発表される。これは欧州言語間の翻訳を対象として設計された。2012年、これが修正され簡略化される。Toyoshima (2014)の調査により、英日にも使えることが分かった。 

16種類のエラーカテゴリー

緑、青、赤、黄で色分け(発表内容のパワーポイント資料を参照:
http://paraphrasing.org/~fujita/publications/coauthor/yamamoto-JAITS2015-slides.pdf
 
(X1)原文内容の欠落
(X2)原文にない情報の付加
(X3)原文内容の歪曲(誤訳)
(X4a)原文表現の押しつけ(未翻訳)
(X4b)原文表現の押しつけ(過度の逐語訳)
(X6)曖昧さ未解消
(X7)不適切/一貫しない訳語
(X8)不自然なコロケーション
(X9)構文誤り
(X10)前置詞や助詞の誤り
(X11)活用の誤りや数・性などの不一致
(X12)つづり誤り、誤変換
(X13)句読法の誤り
(X14)レジスタに適さない用語や表現
(X15)ぎこちない訳
(X16)結束性違反

決定木について

その作成経緯…人により(教員と学習者など)エラーの解釈のずれが生じるので、統一的なエラーカテゴリー付与のためのガイドラインが必要と考えた。決定木でYes(青)/No(赤)を選び、次の質問へ進むことにより、より一貫してエラー付与が行える。

学習者のエラーの推移についての研究

目的は、習熟過程の中でどのエラーが減りやすく、どのエラーが改善困難であるかを見つけること。半期をかけてエラー推移を観察した。対象は、A大学の3~4年生27名。翻訳対象は、TravellerspointおよびDemocracy Now!である。学生が選んだ課題を6回に分けて訳してもらう。(上記2種類の課題を前半・後半に分けて訳す。課題ごとに3本の記事が用意されるので、学生はこのうち好きな記事を1つずつ選び、各々を3回に分けて訳す)学生は、用語集(グロサリー)を作成し、背景知識について発表する。そして、学生の翻訳内容を田辺・山本がダブルチェックでエラー付与し、毎回学生にフィードバック。
 
この過程を経て、のべ1725件のデータを収集。期間は半年だったので、学生がエラー分類を理解するには十分ではなく、学生のエラーデータの量的分析のみ行うことになった。

  • 100ワードに換算してエラー数の推移を調査

  • Toyoshima (2014)との比較

  • アンケートの結果との関連づけ


100ワードあたりのエラー数の推移(調査対象27人全員の合計数)

  • 特にエラーが多かった項目:X7, X3, X13, X4b。
  • X7(一貫しない訳語)については、前半から後半にかけて1.14→0.54へとエラーが減少。
  • X4b(直訳)については、0.52→0.24へとエラーが減少した。
  • エラーがゼロになった学生数

 X7…27人中4人が0に。
 X4b…6人が0に。
 これらは、学習過程で減りやすいエラーであると考えられる。
 
 逆に、
 X3の誤訳は増加…+0.80
 X13の句読法違反…+0.28(こちらは毎回注意しても直らなかった)
 これらは、週に一回、4ヶ月ほどの学習では減りにくいエラーといえそう。

Toyoshima (2014)との誤りの分布の比較

Toyoshima (2014) の課題はエイミーズコラムから選択したもので、学部生および院生に取り組んでもらった。
 
Toyoshima (2014)で誤りが多かったもの
1位…X3
2位…X7
3位以下…X8, X4(X4b), X1, X13…
今回の調査は、このToyoshima (2014)と類似した結果となった。X8についてのエラーがToyoshimaの調査で多かったが、それは決定木がなかったから生じたものであると考えられる。
ちなみに、Toyoshima (2014)と今回の調査の比較で、学部生のエラーに
多いのは…X1, X3, X4b, X7, X13
少ないのは…X2, X8, X14
という点が一致していた。
したがって、これが学部生のエラー傾向と考えられるかもしれない。

アンケート結果との比較

設問は全24問。授業前と授業後に行った。そのうち、18問は意識化についてのもの。6問は自己効力感についてのものだが、対象者の自己評価は、高い人と低い人で差があった。
そこで、「典型的な受講生グループ」を見つけるため、意識化の設問に対する回答結果のみを用いたクラスタ分析を行った。
クラスタ分析から、エラーの出現率が大きく減った学習者は翻訳に対する近い意識を持つようになったことが観察された。

今後の研究計画

エラーカテゴリーの中で、大きく分けた4種類(内容、語彙表現・文法・テキスト)のうち、どのようなものが多いかを調べたい。
今回は27人の合計データを使用して全体的傾向を見たが、今後は学習者ごとの各エラーの増減を調べることで、学習者ごとのエラー出現傾向の違いを調べたい。

質疑応答

(近藤先生(初代通訳翻訳学会会長)より)
Q直訳エラーの判断基準はどのようなものか?
A逐語訳であること、辞書の訳を使っているということを基準とした。
Q句読法のエラーとは?
A指示をしておいてそれにしたがっていないものをエラーとした。
 具体的に参照したのは、記者ハンドブックで決まっている句読法。
 句点は「」の中に入れるか外か、といったもの。
 誤読を招く読点(、)のエラー等は、構文誤りにした。

 
 

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