日本翻訳連盟(JTF)

JTF日本語スタイルチェッカーの基礎と応用

2016年度第2回JTFスタイルガイドセミナー報告
JTF日本語スタイルチェッカーの基礎と応用

西野 竜太郎(にしの りゅうたろう)

翻訳者/ソフトウェア開発者、JTF標準スタイルガイド検討委員IT分野の英語翻訳者でソフトウェア開発者。JTF標準スタイルガイド検討委員。情報システム学修士(専門職)。『アプリケーションをつくる英語』で第4回ブクログ大賞(電子書籍部門)を受賞。雑誌記事に「Learning localization in context」(MultiLingual誌 2013年12月号)など。http://www.nishinos.com/


 



2016年度第2回JTFスタイルガイドセミナー報告
日時●2016年5月16日(金)14:00~16:30
開催場所●剛堂会館
テーマ●JTF日本語スタイルチェッカーの基礎と応用
登壇者●西野 竜太郎 Nishino Ryutaro(翻訳者/ソフトウェア開発者、JTF標準スタイルガイド検討委員)
報告者●東 尚子(個人翻訳者/JTF標準スタイルガイド検討委員)

 



 JTF日本語スタイルチェッカーは、「JTF日本語標準スタイルガイド(翻訳用)」(以下「JTFスタイルガイド」)の公開と合わせて、手軽に利用できるチェックツールの1つとしてJTFホームページで公開されているものである。この第2回セミナーでは、はじめにJTFスタイルガイドの簡単な説明と、このチェックツールの概要と特長の紹介があり、講師によるデモが行われた。そのあと、演習を通じて参加者に実際に操作してもらいながら、オプションの使い方や正規表現による検索文字の指定についての解説が行われた。

 


 JTFホームページで紹介している3つのチェックツールの中でも、このツールの特長として次の点が挙げられる。

・一般的なウェブ・ブラウザー上で手軽に使える
・チェックする項目についてオプションを指定できる
・入力したテキストはユーザーのパソコン内部で処理され、外部には送信されないため、内容が流出する心配はない

 使い方としては、チェックしたい文章をウェブ・ブラウザー上でテキストとして貼り付けてツールを実行すると、JTFスタイルガイドに沿ったチェック結果が同じブラウザー上に表示されるという、とてもシンプルなツールであり、気軽に使用できる。一方で、テキスト以外の形式のファイルを読み込む、複数のファイルをまとめてチェックする、見出しなど文脈判断が必要な箇所に限定されるチェック項目には対応できないという点で、万能ではなく、利用者のニーズに応じて他のツールと使い分けるものだと考えられる。

 オプションで指定できるのは次の3項目で、実際の業務でJTFスタイルガイドと異なる指定が使われる場合にも応用できる。

・オプションA:全角文字・半角文字間の半角スペース(あり/なし)
・オプションB:原則として和文では使用しない記号やかっこ(検出する記号やかっこを選択)
・オプションC:ユーザー入力の検索文字(検出したい文字を自由入力、正規表現に対応)

 オプションCでは、改行で区切ることで複数の項目を入力できるので、たとえば自分が間違いやすい項目をテキストにまとめておいてチェックする、複数の翻訳者に共通のチェック項目を渡して確認してもらう、といった活用例が考えられる。また、正規表現に対応しているため、検索したい文字列をパターン化して効率化できる。オプションCを使用するときは「JTFのスタイルはチェックしない」を選択することで、正規表現に対応した検索ツールとしての使い方もできる。

 演習では、オプションAとBの選択を変えてみて結果を比較する、検出したい文字列やそれに対するコメントをオプションCで指定することで、オプションの基本的な使い方を確認した。さらに応用として、正規表現を使ってチェック項目を記述する方法を学んだ。正規表現を使いこなすことで、特定のパターンの文字列や、表記の揺らぎが発生しやすい用語も検出できることがわかった。

 正規表現を使い慣れていない方や、実務での活用方法にすぐに結び付かない方にとっては、少し難易度が高い実習もあったように思うが、シンプルなチェックから気軽に試せることは確認できた。ツールの画面にも簡単な解説が用意されているので、少しずつ応用してみたい。



 

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