日本翻訳連盟(JTF)

翻訳・通訳業界に未来はあるか? グローバル・コミュニケーションのパートナーとしての翻訳・通訳業界

2017年度第1回JTF関西セミナー報告
翻訳・通訳業界に未来はあるか?
グローバル・コミュニケーションのパートナーとしての
翻訳・通訳業界

 



2017年度第1回JTF関西セミナー報告
日時●2017年7月10日(月)14:00 ~ 17:00
開催場所●ナレッジキャピタルコングレコンベンションセンター
テーマ●翻訳・通訳業界に未来はあるか?
グローバル・コミュニケーションのパートナーとしての翻訳・通訳業界

第I部:基調講演
世界をつなぐコミュニケーションパートナーとして、その展望

東 郁男  Higashi Ikuo(JTF会長、株式会社翻訳センター 代表取締役社長)

第Ⅱ部:業界リーダーによるパネルディスカッション①
AIを超える翻訳者・通訳者を目指して

村下 義男  Murashita Yoshio (株式会社コングレ・グローバルコミュニケーションズ 代表取締役社長)
福富美子  Fuku Fumiko(株式会社アルビス 代表取締役)
橋本富貴子 Hashimoto Fukiko(伝株式会社 シニア翻訳者)
モデレーター●石岡 映子  Ishioka Eiko(JTF理事、株式会社アスカコーポレーション 代表取締役)

第Ⅲ部:若手社員(営業・コーディネータなど)によるパネルディスカッション②
仕事の楽しみ・やりがい・キャリアパスは?
北山 匠Kitayama Takumi(株式会社翻訳センター 医薬営業部大阪オフィス 営業担当)
古野 枝里佳 Furuno Erika(株式会社アスカコーポレーション 品質管理)
モデレーター●矢野 和美 Yano Kazumi(JTF事務局長)

報告者●西中 沙織(株式会社 アスカコーポレーション)
 


 

翻訳力強化、情報交換を目的とするJTF関西セミナーの第1回目が開催された。今回は、翻訳業界への就職を促すために、学生さんたちも対象に含め、業界のトップリーダーよる翻訳業界の現状と課題についての講演とパネルディスカッション、若手社員によるキャリアパスや仕事のやりがいについてのパネルディスカッションが行われた。本稿では、セミナーの様子を簡単に報告する。
 

第I部:基調講演
世界をつなぐコミュニケーションパートナーとして、その展望

東 郁男(JTF会長、株式会社翻訳センター 代表取締役社長)

通訳・翻訳業界の紹介、翻訳業務の流れ、国内翻訳市場、事業環境、ニーズ、AI・IT化に対する課題、翻訳業界の将来等について述べられた。今後、企業のグローバル展開の拡大や訪日観光客の増加によって通訳・翻訳ニーズは増加すると見込まれており、それに伴い翻訳業界もクオリティ、スピード、コスト面について顧客ニーズに対応していく必要があることが言及された。
 

第Ⅱ部:業界リーダーによるパネルディスカッション①
AIを超える翻訳者・通訳者を目指して

村下 義男(株式会社コングレ・グローバルコミュニケーションズ 代表取締役社長)
福 富美子(株式会社アルビス 代表取締役)
橋本 富貴子(伝株式会社 シニア翻訳者)
モデレーター:石岡 映子(JTF理事、株式会社アスカコーポレーション 代表取締役)

 

村下氏 左:福氏、右:橋本氏
関西セミナー
石岡委員長


石岡氏がモデレーターとなり、機械翻訳について業界リーダー3名がそれぞれ意見を述べた。村下氏からは翻訳業界に求められている顧客ニーズに応えるために「次世代翻訳者に求められるスキル」として、具体的な機械翻訳の活用方法が紹介された。その中で、Google翻訳などのニューラルネットワークを利用した機械翻訳(NMT)の利点と欠点、NMTの不備を修正する「ポストエディター」という業務について述べられた。福氏、橋本氏も翻訳支援ツールは積極的に導入している様子であった。一方で、3名とも共通して「人が翻訳する部分は必ず残る」ということを強調していた。今後の翻訳業界・翻訳者の課題として、MT・NMTの不備を修正するための技術獲得、作業量・スピードの向上、コスト削減が挙げられた。

第Ⅲ部:若手社員(営業・コーディネータなど)によるパネルディスカッション②
仕事の楽しみ・やりがい・キャリアパスは?

北山 匠(株式会社翻訳センター 医薬営業部大阪オフィス 営業担当)
古野 枝里佳(株式会社アスカコーポレーション 品質管理担当)
モデレーター:矢野 和美(JTF事務局長)

 

左:北山氏、右:古野氏


矢野氏がモデレーターとなり、仕事の楽しみ、やりがい、キャリアパスについて若手社員2名によるパネルディスカッションが行われた。仕事のやりがいについて、コーディネーターから営業部に移動された北山氏からは、臨床試験で自身の携わった翻訳が活かされているということ、古野氏からは周りの社員と協力して品質向上の方法を考案すること、新人チェッカーの成長を身近で支えられることが挙げられた。また、顧客のニーズをいかに上手く汲み取るか、何か問題が生じた際にどう対策し、次に活かすかということの難しさ、重要性について述べられた。

現在翻訳業界において、TradosやMemosource等CATの活用に加え、Google翻訳やMicrosoft翻訳等NMTの活用が現実的に考えられているということが述べられた。機密保持の観点から導入への障壁は高いが、10年後、20年後には性能も格段に向上し、NMTが主流となっているのかもしれない。村下氏が指摘されていたが、翻訳者には専門知識や情報収集力など翻訳技術に加え、新しい技術を柔軟に導入する力が必要となり、翻訳会社には、MT・NMTを活用するために、利点、欠点の把握、リスクの想定、業務内容の見直しといったことが今後求められるのであろう。

一方で、どうすれば良いものが作れるのか、自分の関わったものがどこで、誰に、どう使われるのかを意識することの重要性を改めて気づかされた。目の前の業務をこなすだけでなく、エンドユーザーの立場に立って良い仕事を行えるように努めたい。

総合司会:安達氏
テーブル出展
会場風景
 
 

共有