私の一冊『The Chicago Manual of Style』
第5回:日英翻訳者 遠田和子さん
一冊選んでと言われしばし悩んだ結果がこれ。『The Chicago Manual of Style』です。マニュアルというとオタク感が漂いますが、英語翻訳には欠かせない一冊です。
シカゴ・マニュアルは米語の標準スタイルガイドで、句読点を含む英文表記やスタイルについて疑問があれば、この本に当たれと言えます。
たとえば、a 100-meter raceにはハイフンが必要だが、a 100 m raceだとなぜ不要? 答え:単位が短縮形のときは不要。
NATO(北大西洋条約機構)とEU(欧州連合)ではどちらにtheが付く? 答え:the EU。アルファベットをそのまま読むのでtheがないと固有名詞だとわからない。
「インターネット」の最新英語表記は大文字か小文字か? 答え:小文字でthe internet。こんな疑問への答えがこの一冊で見つかります。
「そんな細かいこと」と思われるかもしれません。でも細部は大切にしたい。
以前、スペインでガウディの建築物を見学したときのこと。屋根が修理中で、やぐらのてっぺんまで登れました。そこでびっくり! 瓦の一枚一枚、同じ色味は一つとしてなく、微妙に異なる青と紫のトーンで美しく並んでいたのです。まさに「神は細部に宿る」職人技。翻訳でもこうありたいと思いました。品質にこだわる方への一冊です。
★次回は翻訳者の大光明宜孝さんに「私の一冊」を紹介していただきます。