日本翻訳連盟(JTF)

2022年度第2回関西セミナー報告

日 時:2022年8月2日 (火)
開 催:zoomウェビナー
テーマ:多言語国家スイスはいかにして可能かー直接民主主義と中立から考える
講演者:穐山 洋子 同志社大学グローバル地域文化学部准教授

<登壇者のプロフィール>
東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程修了、博士(学術)。現在、同志社大学グローバル地域文化学部准教授。専門はスイス近現代史。主な業績として、(単著)Das Schächtverbot von 1893 und die Tierschutzvereine. Kulturelle Nationsbildung der Schweiz in der zweiten Hälfte des 19. Jahrhunderts, Berlin: Metropol Verlag, 2019、(共著)『中立国スイスとナチズム−第二次大戦と歴史認識』京都大学学術出版会、2010年などがある。

参加者数:21人

概 要

国民国家という概念が成立して以来、言語は国民を統合するための手段として用いられ、単一言語を国家語とする国も少なくない。本講演の対象であるスイスはドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語(レート・ロマンシュ語)の四つの言語を国家語あるいは公用語にしている。
本講演では、まず、スイスがいかにして多言語国家となったのか、歴史的経緯を確認し、多言語性がもたらす問題や言語圏の対立について扱う。それを踏まえ、スイスの多言語性を可能にしている「直接民主主義」という政治制度と「中立」というイデオロギーについて検討する。
多言語性、直接民主主義、中立はいずれもスイスのナショナル・アイデンティティである。この三つの概念を通じて、「多様性の上に一つの政治体を構築」しているスイスという国に迫ってみたい。

<講演のポイント>

  • スイス建国の起源と多言語国家成立までの過程
  • 直接民主主義の制度とその問題点
  • 中立の起源と歴史的経緯および変遷

<参加者のアンケートより>

  • 普段の翻訳に特化したセミナーとは視点が違ってたいへん勉強になりました。質問にも出ていましたが、他国での公的機関での翻訳の取り組みについては、別の国のお話も聞いてみたいと思います。
  • 多言語国家もつらいよ、ということがわかって勉強になりました。
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