第7回「翻訳・通訳業界調査」 クロス集計等の手法を用いた分析結果報告〈法人の部〉
講演者:JTF理事・業界調査委員長、株式会社翻訳センター代表取締役社長 二宮俊一郎さん
2 機械翻訳(MT)の活用状況
●MT活用が進むも統計的有意性は確認できず
次に、MT(機械翻訳)の活用状況ですが、これは20年にも同じ設問を設けており、20年と22年の比較(図12)です。
一番目立つのは、活用しているという企業が20年は71社、22年は80社となっています。実数として増えていますし、構成比としても20年が31.8%、22年が40%で増えていますが、これをカイ二乗検定にかけるとギリギリですが0.051で、「有意ではない」という結果になります。
したがって、回答いただいた企業の中では増えているのは間違いないけれども、それを回答いただいていない企業にまで一般化できるとは言えないという結果です。
●事業規模が大きいほどMT活用を推進傾向
図13はIT活用状況と翻訳事業規模の関連を示すグラフで、1000万未満から20億以上までの翻訳事業規模ごとにMTの活用の有無を集計したものです。これをカイ二乗検定にかけますと、しっかり有意差が出ます。
翻訳事業規模「1000万未満」と報告いただいている会社だと「活用していない」が多いです。「1000万~3000万」でも「活用していない」が多く、「1億~3億」になると「活用検討中」の回答が多くなります。「5億~10憶」だと「活用している」が多くなり、「10憶以上」でも「活用している」が多くなります。
事業規模が大きくなるにつれて、MTの活用について熱心だという傾向が見えます。これは前回20年の調査でも全く同じ傾向が出ましたので、おそらく間違いないところだと考えています。
●工業技術分野はMT活用傾向が強い
続きまして、MT活用状況と翻訳取扱分野との関連(図14)です。
先ほどと違うのは、企業規模のほうは一択で1つだけ選んでいただいているのですが、分野のほうは複数選択なので、まとめてカイ二乗検定をかけることはできません。そのため、特許分野の取り扱いが「ある」「ない」と回答した方々でそれぞれ分解して「活用している」「活用していない」をカイ二乗検定にかけています。そのほかも、医薬だけ、ITだけ、工業技術だけという形で、同様に分解して行っています。
その中で見ていくと、ほとんど有意差が出ないのですが、「工業技術」分野だけ有意差が出ます。実は20年の調査でもそうでした。なぜ工業技術だけが出るかというところがわかりません。前回調査でも私がいろいろデータをいじって、結局、工業技術が直接ではなく、事業規模が媒介変数になっているのではないかと結論付けさせていただきました。
今回もそうなのかとは思いますが、一応きちんと計算したほうがいいだろうと考え、記載しておりませんが、対数線形モデルを使って検証してみました。すると工業技術は出なくて、事業規模だけは関係あるという結果が出ます。ただ単体で見るとここで差が出ているというのは間違いないです。したがって、非常にあやふやですが、工業技術分野がMT活用に熱心なのは間違いないけれども、なぜそうなのかという理由まではわからない、というところを結論とさせていただければと思います。