翻訳支援ツール「Isometry (アイソメトリー)」、「OmegaT」の紹介

2012年度第2回JTF翻訳支援ツール説明会
翻訳支援ツール「Isometry (アイソメトリー)」、「OmegaT」の紹介

 

一好 俊也
株式会社リマ―ジュアーツ
Isometry担当エンジニア  

エラリー ジャンクリストフ
(Jean-Christophe Helary)
株式会社DOUBLET 代表取締役

 



2013年3月7日(水)14:00~16:30
開催場所GMOスピード翻訳株式会社
テーマ●翻訳支援ツール「Isometry (アイソメトリー)」、「OmegaT」の紹介
講師●一好 俊也(株式会社リマ―ジュアーツ Isometry担当エンジニア)/エラリー ジャンクリストフ (Jean-Christophe Helary)(Omega Tプロジェクト 現地化担当 株式会社DOUBLET 代表取締役
報告者●目次 由美子(株式会社 シュタール ジャパン)

 



Isometryには翻訳の助けとなる様々な機能が搭載されています。本説明会では、それぞれの機能の内部的な動作とそれをどのように効果的に用いることができるかを説明します。部分一致による翻訳メモリ検索はなぜ効果的なのか。マウスホバーによる素早い絞り込みとクリップの使い方。品質チェックルールの自作。Officeファイルを翻訳する際の注意点。また、Isometryには翻訳会社向けの機能もあります。コーディネーターと翻訳者がどのように連携して翻訳を進めていくか、用語集や品質チェックを指定しての翻訳タスクについて説明します。
 
OmegaTは2002年11月にJavaアプリケーションとして公開され、10年後の今は世界中に使われ、毎月6000回ぐらい(約75%はWindowsユーザーによって)ダウンロードされ、ほとんどのLinuxディストリビューションに含まれて、Mac用のパッケージも配布されている。しかし、開発やサポート、PR活動はほぼ無償で行われてきた。OmegaTの使い方を簡単に説明してから新機能であるチーム同時翻訳機能などを紹介します。

 

  Isometry  

  一好 俊也  

 「翻訳支援ツールIsometryを使って効率化を図る」  

  OmegaT  

  エラリー ジャンクリストフ  

 「OmegaTとソフトウェア・エコシステム」  

第1部(一好氏):Isometry

 翻訳者でもある一好氏により開発されたIsometryは、「クラウド系」翻訳支援ツールと呼ぶことができる。Chromeブラウザを使用するこのウェブアプリケーションは、ユーザー数や取り扱う文書の数によって月額使用料が設定されている。タスク管理機能はコーディネーターと翻訳者間のコミュニケーションを円滑にするだけでなく、翻訳および情報の共有を容易にするものである。チーム翻訳における用語の変更はリアルタイムで反映され、作業の進捗も確認できる。履歴管理機能により誰がいつどのような変更をしたかを確認することも、変更前の状態に戻すことも可能。また、ユーザーごとに閲覧のみ、編集可といったアクセス権を設定することもできる。
 


より自然な翻訳にするため、原文は標準で段落単位に区切られ、完全一致が検索される。部分一致検索では文字単位での検索も可能であり、マウスカーソルのホバーにより瞬時に実行される。また、日本語、英語を含む17カ国語については語幹処理にも対応している。Isometryの特徴的な機能の一つは、Google翻訳との統合である。翻訳中にGoogle翻訳を実行し、結果を訳文に挿入することができる。
Isometryは品質チェック機能も備えており、原文と訳文での数字対応、禁止ワードの使用などをチェックできる。このチェック用のルールはカスタマイズも可能で、作成したルールはユーザー自身で利用するだけでなく、公開することもできる。エラーが検出された場合は、[修正する]ボタンをクリックするのみで適切な修正が行われる。

 


 

エンタープライズ版ではAPIによるシステム統合も可能。データの安全性に関する国際基準も満たしており、高いセキュリティを実現している。

第2部(エラリー氏):OmegaT

OmegaTは「オープンソース系」翻訳支援ツールであり、無料での利用が可能。Javaで動作するためWindowsやMacといったプラットフォームを問わず、どのコンピューターでも使用することができる。 世界中のボランティアによって構成される「OmegaTプロジェクト」にて開発されており、エラリー氏も主要メンバーの1人である。ソースコードが公開されているため、ユーザー自身によるカスタマイズや機能の拡張・追加が可能。サポートは世界中の1,800人に上る登録メンバーによって活発に運営されており、質問があるとすぐに複数の回答が寄せられるという。2004年に始まったローカリゼーション活動は、現在では32言語に及んでいる。

OmegaTの操作性は「シンプル」の一言につきる。一つの「翻訳プロジェクト」で使用する翻訳対象ファイル、翻訳メモリー、用語集などをプロジェクトフォルダの中に入れ、OmegaTから開くことにより、即時に翻訳を開始できる。ファイルを追加したり、削除することによって翻訳環境を細かく設定することも可能。ユーザーインターフェースにはボタンやアイコンがなく、各ウィンドウの配置も自由である。
 




左図では、ウィンドウの初期位置:訳文を入力していく翻訳編集用ウィンドウ、翻訳メモリーの訳例を表示するウィンドウ、用語集の用語を表示するウィンドウのみを表示させている。

右図では、機械翻訳の提案を表示するウィンドウ、翻訳者用のコメントを表示するウィンドウ、メモを記録するウィンドウなども表示させている。

 
OmegaTの対応ファイル形式はTXT、MS-Office 2007XML、XLFなど。専門性の高いDTPアプリケーションで作成されたデータには対応していないかのように思われるが、Okapi Frameworkというユーティリティーを利用して、OmegaTが対応可能なファイル形式へ変換することができる。ゲーム翻訳会社に勤務するマドロンケイ氏からは、プリプロセスとして複数のファイルから翻訳必要箇所のみを抽出したり、翻訳不要箇所を保護するといった処理も実行できるとの説明があった。Okapiはコアライブラリやアプリケーションなど、ローカリゼーションのためのフレームワークが整備されており、ITS、XLIFF、SRXやTMXなどのオープン標準をサポートしているため、カスタマイズしやすいモジュール構造になっている。

また、チーム翻訳のための新機能も提供している。翻訳メモリーや用語集の共有だけでなく、オンラインで翻訳の同期を実行し、共有することもできる。サーバー上に翻訳が置いてあれば、個人の翻訳者が自宅やオフィスといった場所を問わず、どこででも翻訳可能な環境を実現できる。

まとめ

現在、翻訳支援ツールは数多くあるが、求められる機能は標準化されつつある。Isometryにはクラウド系、OmegaTにはオープンソース系という明確な強みが感じられた。同時に「シンプルさ」という共通項も見受けられた。クライアントによるツール指定は翻訳者の負担ともなりかねないが、翻訳支援ツールが普及し、多くの人に使用されることによって必要な機能がより充実していくようにも思われる。必要な機能を検討した上で、ツールを活用いただきたい。
 

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