日本翻訳連盟(JTF)

JTF Online Weeks(翻訳祭29.5)実行委員長謝辞


実行委員長・JTF専務理事

森口功造


11月9日に始まったJTF Online Weeks(翻訳祭29.5)は、特に大きなトラブルもなく、2週間の再放送の配信期間も無事に終了することができました。ご参加いただきました皆様、関係者の皆様に改めて御礼を申し上げます。

今回のイベントは、チャレンジの連続でした。2020年1月24日、第30回JTF翻訳祭のテーマを「つながる時代を生き抜くために~原点への回帰と進化の道程」とすることが決まり、実行委員会の活動も本格化する最中に、新型コロナウイルスの脅威により、世界は一変してしまったからです。

人に会うこともままならない状況では、パシフィコ横浜での開催は中止せざるを得ず、基調講演にすでに決定していた講師の招待もキャンセルになりました。「翻訳祭は中止にすべきではないか。」ここから5月末までの間、本当に悩ましい時期を過ごしたことを覚えています。

「かつてない困難からは、かつてない革新が生まれ、…※1」るという経営の神様の言葉がメディアでも頻繁に取り上げられ、日常生活においても様々なビジネスモデルの変革が取り沙汰されていました。実行委員会もこの困難と制約を乗り切る知恵を絞りだす必要がありました。

そんな5月末に、まず私が決めたのは「翻訳祭の中止」でした。30年続いていたJTF翻訳祭を中止することについては、いろいろな意見がありましたが、何より関係者の生活環境が激変している可能性を考慮する必要がありました。次に、「コロナ時代だからこそ、オンラインでもイベントを開催しよう」ということを決めました。その上で、今までとは違う発想を得やすくする環境づくりとして、やはり一度リセットしたほうが良いと考えました。

それでも、あえて「翻訳祭29.5」という表記をしたのは、通常どおりに開催されることが期待される来年のJTF翻訳祭へのステップアップにつながるようなイベントにしたいという実行委員の皆さんの強い思いがあったためです。

JTF Online Weeks(翻訳祭29.5)イベントとしての開催が決定してからの実行委員会の活動は実にスムーズでした(委員の皆様には怒られてしまうかもしれませんが)。幸いなことに、テーマは変更する必要がなく、むしろしっくり来ると感じるようになりました。実行委員会が、決してコロナ時代を予見していたわけではありませんが、コロナ時代だからこそ「つながる」ことは強い意味を持ち始めたからです。

それからの実行委員会は、すべてオンラインの会議で実施され、サポーター制度の導入や、動画の積極的活用、会期延長と再放送など、様々な新しい試みやアイデアも生まれました。

当初想定していた700名の参加者を大幅に上回る1100名を超える方々に参加いただくことができたのは、オンラインイベントの強みを活かし、世界各国や、日本国内でも遠方のため普段であれば参加できない方々の参加が増えたからだと思います。また日常業務とのバランスを考慮し、一日最大2セッションとし、会期を2週間に延ばしたことも参加者が増えた要因だったと思います。

イベント終了後に実施したアンケートで、プログラム構成についても概ね好評価をいただいた(良かった(58%)、まあまあよかった(30%))点を考慮すると、イベントとしてはまずは成功したと言えると思います。プログラムの内容を検討いただいた実行委員の皆様のご尽力と講演者の皆様のご協力のおかげです。

ちなみに経営の神様の言葉には、続きがあります。

「かつてない革新からは、かつてない飛躍が生まれるのです。」

来年度JTFは40周年を迎え、JTF翻訳祭は第30回の大きな節目を迎えます。

対面からオンラインへ、開催方法を大きく変更して臨んだJTF Online Weeks(翻訳祭29.5)のチャレンジが革新と呼べるものではなかったかもしれません。しかし、JTFの大きな節目において、さらなる飛躍に役立つチャレンジであったことを願っています。


※1松下幸之助 (雑誌「致知」より)


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