私の一冊『Timeline』

第6回:日英・英日翻訳者 大光明宜孝さん

『Timeline』Michael Crichton(著)、Knopf、1999年(日本語翻訳本『タイムライン』(上・下)は酒井昭伸(訳)、ハヤカワ文庫から2003年に発行)

私の読書歴は偏っていて、高校の頃から松本清張や西村寿行、森村誠一、黒岩重吾など、いずれも気に入った作者のものを徹底的に読みました。とりわけ司馬遼太郎はほぼ読み尽くし。『司馬遼太郎が考えたこと』もすべて。ところが、彼が亡くなってしまったあと、しばし呆然としてしまい、その後は日本の作者のものはあまり読まず、外国の小説にはまります。

川崎駅の有隣堂に海外作品のコーナーがあるのでよく会社帰りに立ち寄り、そこでもまた作者で決め打ち。Tom Clancyから始まりJohn Grisham、Patricia Cornwell、Sidney Sheldonと続きました。

そして今回紹介するのが私のイチ押し、Michael Crichtonです。彼の作品はいろいろ考えさせられるところがありますし、地球温暖化に関する考えが示された『State of Fear』は実に読みごたえがあります。また文体的にとても読みやすい。翻訳者なら原書で少なくとも50冊は読んでいるはず、という人もいますが、翻訳者になるためのトレーニングと考えなくても、本は楽しみながら読むのが一番。その点、面白くてどんどん読み進めることができるので最適です。

さて、その作品の中で心に残っているのが『Timeline』です。これはいわゆるタイムトラベルのお話。フランスで発掘調査にあたっていた考古学の学生たちが、先に過去へと行ってしまった教授を救い出すために14世紀の昔へとタイムトラベルをします。これが実にわくわくする物語で、14世紀の世界が鮮やかに描かれています。そしてエピローグには実に心を打たれます。

◎執筆者プロフィール
大光明宜孝(おおみや よしたか)
日英・英日翻訳者。1978年(株)東芝から米国マサチューセッツ工科大学へ社内留学。51歳で独立してフリーランス翻訳者となり、製品開発技術者としての経験を生かしながら航空、無線通信、鉄道、自動車関連の実務翻訳を20年続けている。共著に『プロが教える技術翻訳のスキル』(講談社)、訳書にT・ジャクソン『ザ・ヒストリー 科学大百科』、コリン・ベバリッジ『身の回りを数学で説明する事典』、マット・クック『名作パラドックス』(以上ニュートンプレス)がある。

★次回は、独日・英日翻訳者でJTF理事の中野真紀さんに「私の一冊」を紹介していただきます。

←私の一冊『The Chicago Manual of Style』

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