日本翻訳連盟(JTF)

私の一冊『日本の小説の翻訳にまつわる特異な問題ー文化の架橋者たちがみた「あいだ」ー』

第37回:龍谷大学 世界仏教文化研究センター博士研究員 プラダン・ゴウランガ・チャランさん

『日本の小説の翻訳にまつわる特異な問題ー文化の架橋者たちがみた「あいだ」ー』(片岡真伊著、中央公論社、2024年)

近年、翻訳研究の分野では、ある種の翻訳不可能論的な転回が見られる。これは、資本主義経済制度を背後に、グローバル化により展開される文化の翻訳と均一化に対する反発だ。この現象を日本文学の海外受容の視点で考察したのが、『日本の小説の翻訳にまつわる特異な問題―文化の架橋者たちがみた「あいだ」』である。日本文学が英訳される時、何が翻訳され、何が翻訳されないのか。翻訳の過程で、作家、翻訳者、編集者、出版社の間でいかなる葛藤が生じるのか。本書は、一九五〇~七〇年代を対象に、これまで注目されてこなかった米大手出版社であるクノップフ社の一次資料を駆使して、いわゆる「ザ・ビッグ・スリー」(谷崎、川端、三島)の作品の英訳を分析し、何が改変され、いかに省略されたのか、そして刊行された小説が英語圏でどのように受け止められたのかを初めて明らかにした。また、日本文学が世界文学になる過程の始まりも解き明かした一冊である。

◎執筆者プロフィール

プラダン・ゴウランガ・チャラン

日本文学・比較文学研究者。日本古典文学の国際的な展開を中心に、翻訳論・世界文学論に関する研究。単著に『世界文学としての方丈記』(法蔵館、2022年)、編著に『ポストコロニアル研究の遺産: 翻訳不可能なものを翻訳する』(人文書院、2022年)など。

★次回は、英日・日英翻訳者の空堀玲子さんに「私の一冊」を紹介していただきます。

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