日本翻訳連盟(JTF)

2秒×1000回=30分のなぞ ~翻訳業務でのWordマクロ活用とWordのチューニング方法~

第1回JTF翻訳セミナー報告
2秒×1000回=30分のなぞ ~翻訳業務でのWordマクロ活用とWordのチューニング方法~


新田 順也 
エヌ・アイ・ティー株式会社
代表取締役/ワードマクロ研究所 代表

 



2012年度第1回JTF翻訳セミナー
2012年5月24日(木)14:00 ~ 16:40
開催場所●剛堂会館
テーマ●「2秒×1000回=30分のなぞ ~翻訳業務でのWordマクロ活用とWordのチューニング方法~」
講師●新田 順也 エヌ・アイ・ティー株式会社 代表取締役/ワードマクロ研究所 代表
報告者●津田 美貴 個人翻訳者

 



セミナー当日は146名の過去最高参加者で、予備の机を出したほど。今回のセミナー講師の新田順也氏は100名以上を相手にマイクを使って話をするのは初めてとのことで、少々緊張した様子で話し始めた。

Wordマクロとは?

参加者の方に事前に「Wordマクロの体験度合い」に関する事前アンケートを実施したところ、約60名から回答を頂いた。そのうち約半数は「Wordマクロって何ですか?」という、まったく使ったことがない初心者の方。1/4の方は「会社から支給されたマクロやネット上にあるマクロを使ったことがある」という方。そして残りの1/4の方は「自分でプログラムを組んだことがある」というプログラミング体験者だった。というわけで、まずはWordマクロとは何かから説明したい。
WordマクロとはWordを自動的に動かす機能で、マクロを含むアドインをアプリケーション(Word)にインストールして使用する。例えばTrados2007はWord上で使用することができたが、これはWordにTRADOS8.dotmというアドインをインストールして使っていたのだ。

 「2秒×1000回=30分」のなぞ

さて、今回のセミナーのテーマ「2秒×1000回=30分のなぞ」とはなにか。答えは、1日のうちで自動化しうる作業の合計時間。ある作業1回を2秒として、1日1000回実施していたら、毎日30分かかっている計算になる。例えば、ウェブサイトから文章をコピーするときに、メモ帳に一度貼付けて不要な書式を削除してからWordに貼付ける方も多いはず。このような「テキスト形式で貼付け」をキーボードのショートカットから実行できたら、それだけで作業をスピードアップできる。この種の作業はたくさんある。また、単純作業を続けていると集中力が切れて単純ミスが増えるが、それを減らす効果も期待できる。
この節約した時間と集中力を本来の翻訳作業に割り振ったり、しっかり休む時間に当てたりすることで、翻訳品質を上げることが可能だ。つまり、Wordマクロを使えば、スピードアップと品質アップの両方を達成できる。

Wordをチューニングする楽しみを!!

Wordのマクロ化に向いていることは、①繰り返し作業②面倒な作業③感覚的なうれしさ(ex.ボタン化やショートカットキーのカスタマイズ)である。自分にとって使いやすくカスタマイズできるので作業効率が上がるだけでなく、クリック数を減らすことで時間を短縮でき、正確に作業をやり遂げることができるのだ。
Wordマクロは、知恵の塊である。経験者が行っているチェック項目や手順の自動化ができる。そして、Wordマクロを配布すれば、誰でも同じことを再現できる。例えば、JTFスタイルガイド(http://www.jtf.jp/jp/style_guide/styleguide_top.html)に書かれている1400ものチェック項目をWordマクロにてボタンのクリックだけで使えるようにできる。そうすれば、このスタイルガイドの知恵をより多くの人が活用できるだろう。つまり、私たちの知恵と経験が、翻訳業界の共有の資産となるのだ。

まとめ

強調したいのは、「Wordマクロは翻訳をしない」ということ。あくまで翻訳者の力を引き出す「業務支援の道具」でしかないのだ。イチローのバットや北島康介の水着と同じようなものであり、Wordマクロは単に翻訳者の力を引き出す道具でしかないことを忘れないでいただきたい。
 


感想

セミナー当日、新田氏がいろいろなWordマクロを実演するたびに、会場から「おぉぉぉぉ!!」という声があちらこちらから上がっていた。特に関心が高かったのがWord内のコメントを一覧表に書き出し翻訳メモにできるツールと、「たいやき」という対訳表の作成チェックツール。私も思わず「欲しい!」と思った。
参考までに、当日実演されたWordマクロの一覧を以下に記載する。

名称

内容

配布形態

JTFマクロ集

上下左右の余白を変更、コメントの一覧表を作成、コメントの一括削除、キーワードを蛍光ペンでマーキング、キーワードのネット検索、数字の半角・全角の変換など約50種類

JTFセミナー参加者に配付
 
一部コードをブログで公開中

蛍光と対策

ユーザー辞書のキーワードを蛍光マーキングし、コメントも挿入
JTFスタイルガイドに則っているかチェック

提供準備中

簡単プリンタ

印刷用ボタンの作成ツール

法人向けに有償提供

フォルダを開く

深い階層のフォルダを開く

法人向けに有償提供

たいやき

特許翻訳の対訳表の作成・英数字記号のチェック

法人向けに有償提供

ショートカット集

翻訳に使えるショートカットをダイアログに表示

セミナーや個人コンサルティングにて提供

頻度のヒント

キーワードの使用頻度を算出

ネットにて有償提供

ホントのフォント

書式情報を見える化

ネットにて有償提供

右クリックでGoogle!

WordからGoogle検索、オンライン辞書の検索

ネットにて無償提供

インプロ

速記用ツール

有償提供準備中

ぱらぱら       

上書き翻訳用の置換ツール

ネットにて有償提供

山猫の手       

置換履歴の自動登録

有償提供準備中

 
また、インターネットで公開されているものもある。セミナーの開催日や提供中のマクロなど、詳しくは新田氏のHP「みんなのワードマクロ」(http://ameblo.jp/gidgeerock/)を参照のこと。

 

 

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